真空管選び962誰も教えてくれない真空管の真実 part2 プリ管編【どれも同じに見えますか?】 画像の6本の真空管は、12AX7という規格のプリ管で、TUNG−SOLというブランドです。 「プリ管ってなんだっけ?」という方は、 ■文系のための真空管入門 part1 プリ管編 をご覧ください。 画像のプリ管は、ロシア工場→米国→日本という長旅(■最初のハードル マッチドペア参照)を経てヴィンテージサウンドが真空管メーカーから直輸入したものです。 画像のとおり、プリ管の外見は、プリント位置の若干のずれ等を除けば、どれも同じで区別がつきません。 上の画像では、箱から真空管を出して撮影していますが、箱に戻すとどうでしょうか。 まさに、販売店で陳列されている状態で、全く区別することができません。 ここで、思い出してください。 真空管は外見が同じでも中身(電気的特性)が違うということを。 実際にどれくらい電気的特性に違いがあるのかをお見せいたしましょう。 その前に、プリ管の構成を復習しておきます。 6本のプリ管10〜60は、第1プレートおよび第2プレートという2つのプレートをそれぞれ有しています。対応関係は、つぎの通りです。 プリ管10→第1プレート11a、第2プレート11b プリ管20→第1プレート21a、第2プレート21b プリ管30→第1プレート31a、第2プレート31b プリ管40→第1プレート41a、第2プレート41b プリ管50→第1プレート51a、第2プレート51b プリ管60→第1プレート61a、第2プレート61b プリ管6本で合計12枚のプレートを有しています。 つぎに、ヴィンテージサウンドの日常業務で使っている真空管試験機で各プリ管の電気的特性として「ゲイン」を測定してみましょう。 ゲインは、プレート毎に測定されますので、1本のプリ管あたり2つのゲインが測定されます。ここが重要なポイントです。例えば、プリ管10では、第1プレート11aのゲイン(第1ゲイン)と、第2プレート11bのゲイン(第2ゲイン)という2つのゲインが測定されるということです。 このように、プリ管の場合には、1本あたり、ゲインを2回も測定しなければならないため、1回の測定で済むパワー管よりも測定に要する時間、手間が2倍かかることになります。 そして、気になる測定結果はつぎの通りとなりました。 ゲインのばらつき具合に思わず「ウソでしょ」という声が聞こえてきそうですが、正真正銘、実際の測定結果です。「12AX7のゲインは100だ」という巷の話は、全くの都市伝説であることがおわかりいただけたことでしょう。ばらつきが大きいものをブログ用に選別したわけではなく、今回入荷した100本からランダムに6本をピックアップしたものです。 何百本ものプリ管を日常的に測定している私からしてみれば、当たり前のことで、これが真空管業界の常識です。 まさか、「自分の真空管アンプのプリ管だけはそうじゃない。ゲイン(電気的特性)が揃っているはずだ」なんてことを考えていませんか? 現実はそう甘くありません。 ヴィンテージサウンドでは、真空管の健康診断と称して、お客様の真空管をお預かりして測定するサービスを実施しています。真空管アンプに実装されている真空管一式(パワー管、プリ管、整流管)を依頼されるケースが多いのですが、かれこれ、1000件あまりの測定をした実績からすると、プリ管のゲインがバラバラであるケースがほとんどです。 これに対して、パワー管は、比較的、電気的特性(プレート電流)が揃っているケースが圧倒的に多いのです。 同じ真空管であっても、パワー管はバラつきが少なく、プリ管のバラつきが大きいのはなぜでしょうか。 「パワー管は丈夫で、プリ管はヘタリ易いから?」・・・・・・全然違います。 「それとも、パワー管はそもそも個体差が小さく、プリ管は個体差が大きいから?」・・・・・これも違います。 答えは、簡単です。 パワー管は電気的特性が揃ったものを選別して販売しているのに対して、プリ管は選別しないで十把ひとからげ的に販売しているからです。 いかがですか。非常に明快な答えでしょう。 そもそも、プリ管を選別していないのですから、揃っているはずがありません。無理からぬ話です。 パワー管については、マッチドペア、マッチドクワッド等のように、特性が揃っているものを販売すること、使うことが当たり前で、販売店と世間(真空管ユーザ)との常識がめずらしく一致しています。販世一致とでも申しましょうか。 これに対して、プリ管は、電気的特性が揃ったマッチド管を選別・販売すること、使用することの概念すら皆無に等しいのが現状です。どうやら、販売店と世間(真空管ユーザ)の共通認識のようです。 少なくとも、ヴィンテージサウンドが2008年7月からプリ管の双極マッチ、マッチドペア2本、マッチドトリオ3本、マッチドクワッド4本およびマッチドセクテット6本を発売した時点では、国内の販売サイトのどこを見回しても、プリ管のマッチド管を販売しているところはありませんでした。現在でも変わり映えしません。 ここで、プリ管のマッチドの考え方には、「内的マッチド」と「外的マッチド」という2種類がありますので、確認しておきましょう。前述したプリ管の構成(プレートが2枚)を知っていれば、容易に理解できます。
内的マッチド内的マッチドは、1本の真空管内におけるマッチドです。上記画像において、プリ管10は、第1プレート11aおよび第2プレート11bを有しております。このプリ管10を真空管試験機で測定すると、第1プレート11aの電気的特性である第1ゲインと、第2プレート11bの電気的特性である第2ゲインとが得られます。 第1ゲインと第2ゲインとを比較するとつぎの2つのケースのうちいずれかの結果となります。 <ケース1>内的マッチド管 第1ゲインと第2ゲインの誤差が所定値*以下である場合 →両ゲインが揃っている。 → 双極マッチまたは双極マッチドと呼ばれており、絶対数が少ないため希少。 <ケース2>アンマッチ管 第1ゲインと第2ゲインの誤差が所定値*より大きい場合 →両ゲインにバラつきがある。 →ほとんどのプリ管がこれに該当。 (*)ヴィンテージサウンドでは、上記所定値を5%として選別しております。 上記グラフにおいて、1本目は、<ケース1>内的マッチド管(双極マッチ)のゲイン実測値で、第1プレートのゲインと、第2プレートのゲインとの差がごく僅かで、特性が揃っているのがわかります。 一方、2本目は、<ケース2>アンマッチ管のゲイン実測値で、第1プレートのゲインと、第2プレートのゲインとの差が非常に大きく、特性にバラツキがあることがわかります。
外的マッチド 外的マッチドは、複数の真空管間におけるマッチドです。 上記画像において、6本のプリ管10、20、30、40、50および60の各プレート11a、11b、・・・、61aおよび61b(合計12枚)の各ゲインの誤差がごく僅かである場合を外的マッチドと言います。 具体的には、つぎのグラフに示した1本目〜6本目までのようにゲイン誤差が所定値以下である場合を外的マッチドと呼びます。なお、同グラフにおいて、7本目は比較のためのデータでアンマッチ管です。 この場合には、6本のプリ管のゲインが揃っているということで、マッチドセクテットと呼ばれています。参考までに、2本であればマッチドペア、3本であればマッチドトリオ、4本であればマッチドクワッドと呼ばれています。 ここで注意すべきは、【内的マッチド】としての双極マッチ管が単に6本あっても、マッチドセクテットではありません。単なる寄せ集めに過ぎません。双極マッチでもゲインが低いものや、高いものがあるからです。 ゲインがほぼ同じ双極マッチが6本揃って、はじめて、マッチドセクテットの称号が与えられます。 6本のプリ管ということは、都合12ものゲインが揃っていなければなりません。いかにハードルが高いかお分かりいただけたでしょうか。いわば、プリ管のエリート集団です。 これで驚いてはいけません。 世の中、上には上があるとは良く言ったものです。 プリ管にも、さらに上をいく超エリート集団が存在します。 それは、完全マッチドです。 上述した内的マッチド(双極マッチ)および外的マッチド(マッチドセクテット、マッチドペア等)では、ゲインの誤差が所定値(5%)以下のプリ管を指しますが、中には、誤差が限りなくゼロに近い、完全マッチドというプリ管も稀に存在します。 この完全マッチドこそが完全マッチドです。 私共は、日々の測定業務において、ゲインがきれいにそろった完全マッチドを発見すると、宝物を見つけたような気持ちになります。 「完全マッチドは、電気的に美しい」 このように言わしめるほど、私共にとっても完全マッチドは特別な存在です。 しかしながら、ヴィンテージサウンドでは、プリ管の完全マッチドとして2種類しかご用意できません。 双極マッチ(1本)とマッチドペア(2本)の2種類だけです。 その希少性故に、完全マッチドのマッチドクワッド(4本)やマッチドセクテット(6本)を揃えることができないからです。 本物の完全マッチドをお見せいたしましょう。
完全マッチド(マッチドペア)ヴィンテージサウンドの実際の在庫品を撮影したものです。下のグラフでは、プレミアムペア(1本目および2本目)の各ゲインがきれいに「103」に揃っています。なお、3本目は、比較用でアンマッチ管です。 プリ管10 第1プレート11a→ゲイン103 第2プレート11b→ゲイン103 プリ管20 第1プレート21a→ゲイン103 第2プレート22b→ゲイン103
プリ管の真実をお分かりいただけたでしょうか。このように、プリ管は、ゲインが全然揃っていないもの、揃っているもの、完全に揃っているものという3種類が存在し、一般の販売店では、選別していないため、購入時にどの種類が来るかはまさに運次第なのです。お客様にとっては、信じられないかもしれませんが、これも真空管業界の常識です。 販売店の店頭でプリ管の測定結果が明記されたものをご覧になったことはありますか。私は見たことがありません。つまり、プリ管は、選別などされないまま販売されています。そして、ユーザは、この事実を販売店から知らされないまま、何の疑問もなく、バラつきがあるプリ管を使い続けているという現実があります。これは、販売店の怠慢でユーザにとって悲劇としかいいようがありません。なお、ヴィンテージサウンドでは、プリ管を選別したマッチド管に測定値を明記して、マッチドの根拠を明示しております。 それでは、なぜ、販売店は、パワー管は選別したものを販売しているのに、プリ管は選別しないで販売しているのでしょうか。理由は、単純明快です。 理由1手間とコストがかかるから プリ管は、プレートが2枚あるので、測定も2回しなければならず、パワー管の2倍の手間とコストがかかるのです。ですから、そもそも、プリ管の測定や選別はやりたくないというのが、販売店の本音です。
理由2パワー管よりも歩留まりが高いから パワー管は、新品検査時の故障率が以外と高く、ノーチェックでの販売はクレーム処理の山となるため、現実的ではありませんが、プリ管ですと、やろうと思えば可能です。プリ管は、新品検査時の故障率が非常に低いため、仮に、ノーチェックで販売してもクレームはほとんど来ないと思います。巷で安価に販売されているプリ管は、このケースと思われます。
理由3デバイスとしてプリ管を軽視しているから プリ管は、微弱な信号を最初に増幅し、音色の味付けを決定する重要なデバイスですが、パワー管よりも小さく存在感がありませんので、脇役的なイメージがどうしても付きまといます。プリ管のバラつきがサウンドのバラつきに直結するにもかかわらず、実際には、プリ管にバラつきがあっても、最悪なことにとりあえず音がでてしまうので、ユーザからもクレームが来ません。これを知ってか知らずか、プリ管は、軽視されつづけ、未測定・選別のまま販売されつづけています。 未測定・選別のプリ管を購入した場合には、特性がそろっているか否かは「あなたの運次第」となってしまいます。 ここで、断言します。 プリ管が運次第では、サウンドも運次第となり、真空管をとっかえ、ひっかえするという負のスパイラルに嵌まり、お金ばかりが出てゆくことになります。第一に効率的ではありません。真空管で理想のサウンドを設計するというサウンドデザインは、理論に基づき、経済的に行われるべきです。 プリ管のゲイン(電気的特性)を把握した上で、マッチド管(双極マッチ(1本)、マッチドペア(2本)、マッチドトリオ(3本)、マッチドクワッド(4本)またはマッチドセクテット(6本)を真空管アンプの適所に使うことにより、経済的かつ飛躍的にパフォーマンスを高めることができるのです。 「本当か?」というお客様の声が聞こえてきそうなので、マッチド管を使った場合のメリットを、真空管式オーディオアンプと、真空管式ギターアンプとに分けて詳述します。なぜ、分けるのかと言えば、大きな理由として、真空管式オーディオアンプがスピーカ2系統のステレオ構成であるのに対して、真空管式ギターアンプは、スピーカ1系統のモノラル構成で、両者のスピーカの構成が異なるからです。
真空管式オーディオアンプにプリ管のマッチドを使うメリット
オーディオアンプの場合のメリット1 →設計通りの最高パフォーマンスを発揮することができる!
そもそもの話ですが、真空管式オーディオアンプを設計する際、設計者は、同じ規格(例えば、12AX7)のプリ管であれば、ゲインが全て等しいことを大前提に、最高のパフォーマンスが発揮されるように、各部のパラメータを計算し、回路図に起こしてゆきます。 前述のゲイン実測値から明らかなように、プリ管のゲインが全て等しいとは、現実離れも甚だしく、まさに、理想ゲインです。なお、電子工学の理論では、計算を楽にするために、現実にはあり得ないモデルを「理想○○」として仮定することはよくあることですが、真空管式オーディオアンプの設計においても同じことが言えます。 従って、実際のプリ管のゲインのバラツキが大きいほど、設計上の最高パフォーマンスからどんどん離れてゆきます。つまり、本来であれば、発揮されるであろうサウンドには、ほど遠い状況になります。ゲインのバラツキは、自動車でインチ径がそれぞれが異なるタイヤで走行するようなものです。乗り心地が良いはずがありません。 これに対して、ゲインのバラツキができるだけ少ないプリ管を使うと、設計上の最高パフォーマンスに近づくことになり、当然、サウンドの向上を図ることができます。これは、インチ径が同じタイヤで走行していると同じ状態ですから、乗り心地が良いことはもとより、高速走行でもパフォーマンスを発揮できます。要は、プリ管のバラつき(ゲイン差)とは、こういうことなのです。
オーディオアンプの場合のメリット2 →左右スピーカーのバランスをとることができる!また、真空管式オーディオアンプの場合には、左スピーカおよび右スピーカに対応させて、2系統のプリ管が使われます。2系統のプリ管の本数は、アンプに応じてケースバイケースで、最低1本あればよく、高度な設計になるほど2本、3本、4本、6本、etcとその数が増えてゆきます。 「あなたのアンプには何本のプリ管が実装されていますか。」 ここで、もう一度、プリ管の構成を思い出してください。 プリ管は、一卵性双生児の構成、すなわち、第1プレートおよび第2プレートを有する構成でしたね。
プリ管1本真空管式オーディオアンプに1本のプリ管10が実装されている場合には、例えば、第1プレート11aが左スピーカに対応し、第2プレート11bが右スピーカに対応しています。真空管式オーディオアンプの場合には、左右スピーカのバランスが肝で、このバランスが完全にとられていることが理想となります。 これを踏まえて、プリ管10の第1プレート11aのゲインと、第2プレート11bのゲインとの誤差が大きい場合、左右スピーカのバランスは当然崩れます。右スピーカーのほうが左スピーカよりも音量が大きいとか、右スピーカの低域が出ない等のアンバランスな最悪の状況となります。 残念ながら、ヴィンテージサウンドに健康診断を依頼されたプリ管を測定すると、特性が揃ったものはほとんどなく、そのほとんどは、アンバランスなゲインのプリ管です。 にもかかわらず、なぜ、この問題が顕在化しにくいかといえば、最初は左右アンバランスなサウンドに違和感を感じたとしても、人間の耳はそれに順応しようとし、いつの間にか慣れてしまうからです。慣れとは恐ろしいもので、どんなに高価なコンポーネント(真空管アンプ、スピーカー、プレイヤー等)を導入しても、たったプリ管1本が原因ですべてが台無しになっていることに気づかないのです。 1本のプリ管を双極マッチに交換するだけで、ご機嫌なサウンドライフが待っているのです。 何万円もする高価なケーブルに交換する前に、わずか数千円の投資で済むプリ管を交換してみませんか。これこそ、生きたお金の使い方です。
プリ管2本真空管式オーディオアンプに2本のプリ管10および20が実装されている場合には、1本目のプリ管10が左スピーカに対応し、2本目のプリ管20が右スピーカに対応しています。 1本目のプリ管10のプレート11aおよび11bの各ゲインと、2本目のプリ管20のプレート21aおよび21bの各ゲインとの誤差が大きいとどうなるでしょうか。 みなさん、もうおわかりですね。 そうです、左右スピーカがアンバランスとなり、違和感を感じます。 改善策は、2本のプリ管10および20のゲインが揃ったもの、すなわち、4つのゲインが揃ったマッチドペア(2本)に交換することです。もちろん、理想的には、完全マッチの完全マッチドのマッチドペアです。
プリ管3本真空管式オーディオアンプに3本のプリ管が実装されている場合には、左右スピーカとの対応関係はどうなるでしょうか。 答えはかんたんです。 プリ管1本とプリ管2本との合わせ技で解決できます。 1本目のプリ管10の第1プレート11aが左スピーカ、同プリ管10の第2プレート11bが右スピーカ、2本目のプリ管20(第1プレート21a、第2プレート21b)が左スピーカ、3本目のプリ管30(第1プレート31a、第2プレート31b)が右スピーカにそれぞれ対応しております。 プリ管10、プリ管20およびプリ管30の各ゲイン(プレートが6枚なので6つのゲイン)の誤差が大きいと、当然、左右スピーカがアンバランスとなり、違和感を感じます。 改善策といえば、3本のプリ管10、20および30のゲインが揃ったもの、すなわち、6つのゲインが揃ったマッチドトリオ(3本)に交換することです。残念ながら、マッチドトリオについては、完全マッチの完全マッチドの設定はありません。
プリ管4本真空管式オーディオアンプに4本のプリ管が実装されている場合には、2本づつが左右スピーカに対応しております。 具体的には、1本目のプリ管10(第1プレート11a、第2プレート11b)および2本目のプリ管20(第1プレート21a、第2プレート21b)が左スピーカに対応しております。 一方、3本目のプリ管30(第1プレート31a、第2プレート31b)および4本目のプリ管40(第1プレート41a、第2プレート41b)は、右スピーカに対応しております。 プリ管10、プリ管20、プリ管30およびプリ管40の各ゲイン(プレートが8枚なので8つのゲイン)の誤差が大きいと、当然、左右スピーカがアンバランスとなり、違和感を感じます。 改善策といえば、4本のプリ管10、20、30および40のゲインが揃ったもの、すなわち、8つのゲインが揃ったマッチドクワッド(4本)に交換することです。残念ながら、マッチドクワッドについても、完全マッチである完全マッチドの設定はありません。
プリ管5本真空管式オーディオアンプに5本のプリ管が実装されている場合には、左右スピーカとの対応関係はどうなるでしょうか。 答えはもうおわかりですね。 そうです。プリ管1本とプリ管4本との合わせ技で解決できます。 1本目のプリ管10の第1プレート11aが左スピーカ、同プリ管10の第2プレート11bが右スピーカに対応しております。 さらに、2本目のプリ管20(第1プレート21a、第2プレート21b)および3本目のプリ管30(第1プレート31a、第2プレート31b)が左スピーカに対応しているとともに、4本目のプリ管40(第1プレート41a、第2プレート41b)および5本目のプリ管50(第1プレート51a、第2プレート51b)は、右スピーカに対応しております。 プリ管10、プリ管20、プリ管30、プリ管40およびプリ管50の各ゲイン(プレートが10枚なので10のゲイン)の誤差が大きいと、当然、左右スピーカがアンバランスとなり、違和感を感じます。 改善策といえば、5本のプリ管10、20、30、40および50のゲインが揃ったもの交換してください。なお、ヴィンテージサウンドでは、5本マッチの設定が無いため、マッチドセクテット6本をお使いになり、残り1本を予備球とされることをお奨めいたします。
プリ管6本最後に、真空管式オーディオアンプに6本のプリ管が実装されている場合には、3本づつが左右スピーカに対応しております。 具体的には、1本目のプリ管10(第1プレート11a、第2プレート11b)、2本目のプリ管20(第1プレート21a、第2プレート21b)および3本目のプリ管30(第1プレート31a、第2プレート31b)が左スピーカに対応しております。 一方、4本目のプリ管40(第1プレート41a、第2プレート41b)、5本目のプリ管50(第1プレート51a、第2プレート51b)および6本目のプリ管60(第1プレート61a、第2プレート61b)は、右スピーカに対応しております。 プリ管10、プリ管20、プリ管30、プリ管40、プリ管50およびプリ管60の各ゲイン(プレートが12枚なので12のゲイン)の誤差が大きいと、当然、左右スピーカがアンバランスとなり、違和感を感じます。 改善策といえば、6本のプリ管10、20、30、40、50および60のゲインが揃ったもの、すなわち、12のゲインが揃ったマッチドセクテット(6本)に交換することです。
オーディオアンプの場合のメリット3 →理想サウンドを維持することができる!「前と同じブランドのプリ管に交換したのに、サウンドが変わってしまった」という経験は誰しもあるでしょう。 なぜ、同じブランドなのに、サウンドが変わってしまうのでしょうか。読者の皆様なら答えはかんたんですね。理由は、同ブランドであっても、電気的特性(ゲイン)が異なるからです。そうです。真空管の個体差が原因です。 逆の言い方をすれば、同じブランドの同じゲインのマッチドプリ管に交換すれば、交換後も理想サウンドを維持し続けることができます。 ヴィンテージサウンドでは、ご購入いただいたマッチドプリ管にゲインが明記されておりますので、次回購入時にそのゲインを指定していただければ、同ブランドかつ同ゲインのプリ管を容易に入手することができるため、いつまでもお気に入りのサウンドをご堪能いただけます。
真空管式ギターアンプにプリ管のマッチドを使うメリット次に、真空管式ギターアンプを語る前に、真空管式オーディオアンプとの相違点を理解しておきましょう。 真空管式ギターアンプの場合には、エントリーモデルを除き、ギターサウンドのエフェクト(効果)に対応させて、 クリーン系チャネル、歪系チャネル、ファズ系チャネル等が設けられており、各チャネルに複数のプリ管が割り当てられるという、真空管式オーディオアンプとは異なる構成とされております。グレードが上がるほど、チャネル数およびプリ管の本数も増加します。エフェクト以外にも、増幅、位相変換や混合等の用途で複数のプリ管が使われております。 また、真空管式ギターアンプの場合は、スピーカーが1系統のモノラルチャネルという点でも、2系統のステレオチャネルを有する真空管式オーディオアンプとは構成が異なります。 なんといっても、真空管式ギターアンプと真空管式オーディオアンプとの一番の違いは、真空管の動作領域です。ここで動作領域とは、真空管を動作させる場合の電気的な条件(例えば、何ボルトのプレート電圧およびグリッド電圧を印加して何アンペアのプレート電流を流すか)を指します。車に例えるならば、何回転でエンジンを駆動するかということです。 真空管式オーディオアンプの場合には、動作領域として、歪が最も少なく、安定動作が得られる定常領域を使います。車ならば、タコメータのレッドゾーンよりもずっと低い回転数領域を使います。これは、歪をいかに0に近づけるかがオーディオ再生の大命題だからです。定常領域での動作は、真空管にとって定格内のためやさしい使用条件となり、長持ちします。 これに対して、真空管式ギターアンプの場合には、動作領域として、歪が多く、動作が不安定な飽和領域を使います。そうです。レッドゾーン超えです。これは、定常領域では到底得られないサウンドを飽和領域で実現するためです。真空管式ギターアンプは、楽器の一部なので、いかに特徴のあるサウンドを作り出すかが設計者の腕の見せどころなのです。 飽和領域における真空管の使用は、定格電圧以上の高電圧を印加するため、真空管にとって、定格外の過酷な使用条件となり、当然のことながら真空管の劣化が早くなります。真空管の寿命は、定格電圧比(印加電圧/定格電圧)の2乗に反比例するといわれておりますので、飽和領域で定格電圧の2倍の電圧を真空管に印加している場合には、2の2乗で、寿命は、4分の1となります。 使用頻度にもよりますが、真空管式オーディオアンプの真空管寿命が3〜5年であるのに対して、真空管式ギターアンプの真空管寿命(サウンドの旬)は、1年前後と言われております。この寿命の違いは、動作領域の違いが原因です。 「俺のギターアンプは、2年ももってるぞ」という声も聞こえてきそうですが、とりあえず音は出ているものの、サウンドの旬はとっく過ぎており、いわば賞味期限切れサウンドとなっているケースが多く見受けられます。サウンドのノリに違和感を感じたり、音痩せ、歪不足、ノイズが気になるようになったら、いよいよ、サウンドの旬の終焉のサインです。早めに交換しましょう。 ここで、両アンプの相違点を理解できたところで、いよいよ核心に迫ります。
ギターアンプの場合のメリット1 →設計通りのパフォーマンスを発揮することができる!真空管式オーディオアンプと同様にして、真空管式ギターアンプを設計する際も、設計者は、同じ規格(例えば、12AX7)のプリ管であれば、ゲインが全て等しいことを大前提に、そのアンプ固有のオリジナルサウンドとなるように、各部のパラメータを計算し、回路図に起こしてゆきます。 従って、実際のプリ管のゲインのバラツキが大きいほど、設計者が意図したサウンドからどんどん離れてゆきます。つまり、本来であれば、発揮されるであろうサウンドには、ほど遠い状況になります。 特に、真空管式ギターアンプの場合には、飽和領域で真空管を動作させているため、プリ管の僅かなゲイン差であってもサウンドに及ぼす影響が非常に大きく、真空管式オーディオアンプとは比べ物にならないくらい、シビアです。 レッドゾーン回転(飽和領域)で高速走行している車の場合、ハンドルを僅かに回転させただけでも、車体の挙動に大きく影響するのと同じことです。のんびりした30キロ走行(定常領域)の場合とは比べ物になりません。 これに対して、ゲインのバラツキができるだけ少ないプリ管を使うと、設計通りのサウンドにより近づき、そのギターアンプ本来のオリジナルサウンドを体感することができるのです。
ギターアンプの場合のメリット2 →最短距離で理想サウンドに到達することができる!ギターアンプは、純粋な増幅機能というよりも、楽器の一部機能としての役割が大きいことは周知の事実ですが、その音作りには誰しも関心が高いはずです。つまり、そのギターアンプを使って、いかに自身が理想とするサウンドに近づけるかという一点に絞って、試行錯誤を繰り返すことになります。 ここで、ギターアンプのサウンドを変化させるための主なファクター12を確認しておきましょう。これらのファクター12のうち一つでも変化させることにより、程度の差こそあれサウンドが変化します。数学に例えると、各ファクターは、理想サウンド関数f(x1、x2、x3、・・・、x12)の各変数に該当します。
つぎに、各ファクターについて詳述します。 (1)電源のクオリティ電源が無ければ、どんなに高価なアンプもただの箱です。アンプの各部に供給される電源は、サウンドを根本から支配する要のファクターで、この良し悪しですべてが決まってしまうといっても過言ではありません。ほぼ100%のアンプの電源は、商用電源で、いわゆるコンセント電源(AC100V)です。実際の商用電源は、かなりのクセモノで、電圧が変動するわ、ノイズが多いわ、周波数が変動するわ等、アンプにとっての悪条件がこれでもかという位に揃っています。電源に関しては、つぎの点を留意することが基本中の基本となります。
以下、各論について詳述します。
(a)電源電圧がアンプの定格動作電圧であること定格動作電圧が117Vの海外製アンプに、日本の商用電源100Vをそのまま使っている方はいませんか?日本の商用電源100Vのほうがアンプにはやさしいから真空管が長持ちするんだという、苦しまぎれの言い訳も聞こえてきそうですが、残念ながら、間違った使い方です。すぐに、スライダックかステップアップトランスを購入して、117Vの電源電圧をアンプに供給してください。アンプからのサウンドが見違えるほど、張りのあるものに代わっているはずです。 スライダックは、商用電源100Vを0Vから例えば130Vくらいまで可変することができるトランスで、可変範囲としてさまざまなタイプが用意されておりますので、使用アンプに応じて適宜選択してください。ステップアンプトランスは、商用電源を100Vから例えば117Vに固定的に変換するためのトランスです。スライダックのほうが汎用性が高く高価です。
(b)電源電圧・周波数の変動ができるだけ小さいこと商用電源は、100Vで一定だと思っている方はいませんか?実際には、時間帯や、負荷の大小によって、大きく変動します。一般的には、負荷が大きい日中のほうが、夜間よりも電圧変動が大きくなる傾向にあります。また、家庭での使用ですと、エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機等をフル稼働させると、ブレーカーから見た負荷が大きくなり、電圧変動も大きくなります。電源周波数も同様に負荷の状況によって変動します。 電源電圧や周波数変動対策には、安定化電源を導入することをお勧めいたします。但し、安定化電源にも性能に応じてピンキリの価格がありますので、ご予算に応じて適宜選択する必要があります。
(c)電源ノイズができるだけ少ないこと商用電源の波形は、サイン波(三角関数のsinθ)ですが、あのように美しい波形ではありません。実際には、純粋なサイン波にノイズが重畳された波形となります。このノイズは、電源ノイズとして、アンプのサウンドに悪影響を与えます。家庭におけるノイズの発生源は、回転負荷、スイッチング電源等です。回転負荷は、洗濯機のモーター、冷蔵庫のコンプレッサ等です。スイッチング電源は、パソコンの内蔵電源等です。原因がわかれば、対策は簡単です。これらのノイズ発生源とアンプの電源系統を別にするとともに、ノイズフィルターを各部に入れることです。
(2)線材のブランド 線材線材のブランド 線材とは、電源ケーブルや、スピーカーケーブル、アンプ内部の配線のことです。この線材もピンキリで、1m数十円のものから数万円のものまであります。顕著な効果があるかは別として、中には、数十万円/本もするケーブルも市販されています。しかしながら、科学的な解明はまだされていないものの、線材のブランドを変更することにより、程度の差こそあれサウンドに変化をもたらすことは現象として事実です。理屈はわからなくても現象としてあれば、これを利用しない手はありません。 線材にも、現行品とヴィンテージ品とがあり、A社の線材はいいぞ、ウエスタンエレクトリックのヴィンテージ線材はいいぞ等の情報が飛び交っていますが、実際には、予算にあわせて、トライアンドエラーで交換してみるのが良いと思います。ハンダごてさばきに自信がある方はぜひお試しください。
(3)ハンダのブランドハンダと一口に言っても、ブランドによって含有成分がまちまちで、銀入り、フラックス無し、無鉛等が市販されております。ハンダは、電子部品の接続点に必ず使われておりますので、見過ごせないファクターです。ハンダの場合も、科学的な解明はされておりませんが、ハンダのブランドを変更すると、サウンドに変化をもたらすことは事実です。中には、ハンダ吸い取り器とハンダごてを振り回して、全ハンダの付け直しをしたという強者もいるほどです。ハンダにも現行品とヴィンテージ品とがありますが、憧れとその存在感からヴィンテージ品の人気が高い傾向にあります。
(4)コンデンサのブランド真空管アンプ回路は、電源系回路と信号系回路に大別されますが、両回路にコンデンサが使われております。代表格として、電源系回路では平滑コンデンサ、信号系回路では、バイパスコンデンサ、カップリングコンデンサ等です。これらのコンデンサにもさまざまなブランドと価格帯があり、ブランドによってサウンドが変化します。ヴィンテージ品で有名どころは、ブラックビューティー、バンブルビー、ビタミンQ等です。ヴィンテージアンプでは、発売当時のサウンドを維持するために、消耗品としてのコンデンサを定期的にオリジナルコンデンサに交換することが重要となってきます。コンデンサは、熱に弱く必ず劣化しますので、定期交換パーツの一つです。膨らみや液漏れ、ヒビ割れを発見したら、即時の交換が必要です。
(5)プリ管のブランド同じ規格(例えば、12AX7)のプリ管でもさまざまなブランドが存在します。ブランド毎に構成が異なるため、それに伴って電気的特性が微妙に異なり、ひいては、サウンドの相違となります。一言で言えば、プリ管のブランドを変えることで、サウンドを変化させることができます。このようなカスタム感は、ソリッドステートアンプには無い、真空管アンプの魅力の一つです。
(6)プリ管のゲイン真空管は個体差が非常に大きいため、同じブランドのプリ管であっても、電気的特性(ゲイン)にバラつきがあります。つまり、ゲインが高いプリ管もあれば、ゲインが低いプリ管もあります。ゲインが高ければ、歪みやすくなり、低ければ歪にくくなります。
(7)パワー管のブランドプリ管と同様にして、同じ規格(例えば、EL34)であってもさまざまなブランドが存在し、ブランド毎に構成の相違によるサウンド変化を楽しむことができます。
(8)パワー管のパワーパワー管もプリ管と同様にして、個体差が大きいため、同じブランドのパワー管であっても、電気的特性(プレート電流、パワー)にバラつきがあります。このパワーの相違によって、サウンドの音圧感、輪郭等を自在に変化させることができます。
(9)整流器の種類商用電源(交流電源)から直流電源を作り出す役目が整流器にあるのですが、整流器としては、ソリッドステート(半導体)と整流管(真空管)のいずれかが用いられています。ソリッドステートと整流管とでは、出力電圧の相違により、サウンドキャラクタが異なります。ソリッドステートは、音圧感のあるクリアサウンド、整流管は、それよりもやわらかいサウンドとなります。ソリッドステートタイプの場合には、整流管に交換することができませんので、それを使うしかありません。一方、整流管タイプの場合には、ソリッドステートに交換もできるため、サウンドを変化させることができます。従って、整流管タイプのほうがサウンドデザインの自由度が高いということができます。
(10)整流管の規格整流管にもさまざまな規格があり、代表的なものは、5U4GB,5U4G,5Y3GT,GZ34/5AR4等です。これらの規格毎に出力電圧が異なるため、互換性があるものに関して、規格を変更することにより、サウンドを変化させることができます。
(11)整流管のブランド整流管も、上述したプリ管、パワー管と同様にして、同じ規格であっても、ブランド毎に構成が異なるため、電気的特性が微妙に異なります。この相違点は、すなわち、サウンドに変化をもたらします。
(12)トランスのブランド真空管アンプの場合には、真空管回路の出力インピーダンスが高く、スピーカーのインピーダンスが低いため、両者のインピーダンスマッチングを図る必要があります。その役目を担うのがトランスで、この良し悪しがサウンドに多大な影響を及ぼします。トランスにも様々なブランドがありますので、自在にサウンドを変化させることができます。但し、トランス交換は、大手術となりますので、真空管交換のように気軽にできないのが難点です。
話が大きく横道にそれましたが、真空管式ギターアンプにプリ管のマッチドを使うことで、最短距離で理想サウンドに到達することができる理由について述べます。 上述の「(5)プリ管のブランド」および「(6)プリ管のゲイン」で説明したように、プリ管に関しては、ブランドとゲインという2つのファクターによりサウンドが変化します。 ここで、具体例として、4本のプリ管を実装しているギターアンプを例に理想サウンドに到達するまでの手法について、【一般的な手法】と、【ヴィンテージサウンドが提唱する手法】とに分けて説明します。ここでは、プリ管として、「ブランドBの高ゲイン」が、理想サウンドを実現することができる最適解だと仮定します。 一般的な手法 ・ブランドA 4本 ・ブランドB 4本 ・ブランドC 4本一般の販売店では、上記各ブランドの4本のゲインはバラバラで揃っていません。従って、ゲインというファクターは、運次第となりますので、自発的にコントロールすることができません。 一般的な手法の場合には、まず、ブランドA(4本)を実装して、ギターを弾き、サウンドを評価します。ここで注意すべきは、4本のゲインが揃っていないため、歪み具合をゲインという数値に基づいて、定量的に判断することができません。従って、ブランドAについては、歪みやすいとか歪みにくいという、ゲインを無視した極めて乱暴な判断しかできません。つまり、ゲインが不明な状態では、正確なサウンド評価はできません。 ここでは、ブランドAのサウンド評価はNGだったとします。 つぎに、ブランドB(4本)に交換して、ギターを弾き、サウンドを評価します。もちろん、ブランドBの4本はゲインにバラツキがありますので、最適解の高ゲインとして揃っている可能性は0%です。従って、この場合には、ブランドBのサウンド評価はNGとなります。 つぎに、ブランドB(4本)を交換した場合にも、同様にNGとなります。これ以降は、別のブランドD、ブランドE、ブランドF、ブランドG、・・・・・という、ありとあらゆるブランドを手当たり次第交換するという負のスパイラルに突入してゆきます。これでは、いくら時間とお金があっても、「ブランドBの高ゲイン」という最適解にはたどり着きません。 皮肉を込めて言わせていただくと、真空管屋と楽器屋を儲けさせるだけです。 これは、ゲインという重要なファクターを無視して、ブランドだけに頼ってしまったことが原因です。
ヴィンテージサウンドが提唱する手法ヴィンテージサウンドでは、全プリ管を実測して、ゲイン別に選別・販売しておりますので、つぎのようなラインナップから選択することができます。 ・ブランドA 4本マッチ 低ゲイン ・ブランドA 4本マッチ 中ゲイン ・ブランドA 4本マッチ 高ゲイン ・ブランドB 4本マッチ 低ゲイン ・ブランドB 4本マッチ 中ゲイン ・ブランドB 4本マッチ 高ゲイン(最適解) ・ブランドC 4本マッチ 低ゲイン ・ブランドC 4本マッチ 中ゲイン ・ブランドC 4本マッチ 高ゲイン まず、「ブランドA 4本マッチ 低ゲイン」を実装して、ギターを弾き、サウンドを評価します。この場合には、サウンド評価は、NGとなります。以後、「ブランドA 4本マッチ 中ゲイン」→ 「ブランドA 4本マッチ 高ゲイン」→「ブランドB 4本マッチ 低ゲイン」→「ブランドB 4本マッチ 中ゲイン」の順に、プリ管の交換とサウンド評価が繰り返され、いずれもNGとなります。 そして、最適解たる「ブランドB 4本マッチ 高ゲイン」に交換したときのサウンド評価は、もちろんOKとなります。一見すると、ゲイン毎の交換およびサウンド評価に手間がかかるようですが、上述した一般的手法に比して、極めて合理的かつ経済的に最短距離で理想サウンドに到達できることがおわかりいただけたと思います。
ギターアンプの場合のメリット3 →理想サウンドを維持することができる!真空管は消耗品ですので、やがて交換時期が到来します。ここで問題となるのは、同一ブランドのプリ管に交換しても、交換前後でサウンドが変化してしまう点です。理由は、ブランドが同一であっても、交換前後でゲインが変わってしまうからです。 一方、ヴィンテージサウンドの場合、プリ管のマッチドをご購入いただくと、そのプリ管のゲインが数値でわかりますので、次回交換時に「ブランド」と「ゲイン」の両方を指定していただければ、交換前と同じ音色の理想サウンドを維持することができます。
ギターアンプの場合のメリット4 →都市伝説に翻弄されない音作りができる!「ブランドAのプリ管は良く歪む」、「ブランドBのプリ管は歪みにくい」等の体験談がいわば都市伝説としてネットをにぎわせており、これらを参考にプリ管選びをされている方も多いことでしょう。 これらの都市伝説で欠けているファクターがあります。もうおわかりですね。 私が口を酸っぱくして言っている「ゲイン」です。 ブランドAのプリ管が歪んだ理由は、そのプリ管のゲインがたまたま高かったからです。もしも、ブランドAのプリ管のゲインが低かったら、逆に歪みにくくなります。 ですから、「ブランドAのプリ管は良く歪む」という体験談に対して、「俺は、ブランドAのプリ管を使ってみたが、歪まなかったぞ」という反対意見があるのも、ゲインの理屈がわかっていれば、納得できるハズです。 私からみると、両者は間違ったことを言っていませんが、「ゲイン」という言葉が足りず、表現が正確ではありません。 正確に表現するならば、つぎのようになります。 「ブランドAの高ゲインのプリ管は良く歪む」 「俺は、ブランドAの低ゲインのプリ管を使ってみたが、歪まなかったぞ」 こう表現し直してみると、ちょっと滑稽で、理論的に当たり前のことを言っているので、もはや都市伝説とは呼ぶことができません。 ゲインと歪みとの相関関係を知っていれば、いわゆる都市伝説に翻弄されない音作りをすることができます。
ギターアンプの場合のメリット5 →理論的に歪をコントロールすることができる!ギターリストにとって、サウンドの歪み具合は非常に重要な意味を持ちます。暴れたような歪み、心地よい歪み、無機質な歪み、自然な歪み等です。 ギターアンプにおいて、歪みを発生させる原理は極めて簡単です。電子工学的には、増幅器の振幅制限機能を使っているだけです。簡単に言うと、増幅器は、信号を無制限に増幅することができる訳ではなく、増幅に限界があり、それを越えると、増幅できなくなります。増幅できない部分の波形の振幅に制限がかかり、波形歪みとなって出力されます。これを積極的に利用したのが、ギターアンプの歪みサウンドです。 また、振幅制限機能を発揮させるためには、ギターアンプに過大な信号を入力する方法と、ギターアンプ自体の増幅度を無理矢理高める方法とがあります。前者は、エフェクター等でギター信号を過大に増幅してから、それをギターアンプに入力する方法です。後者は、真空管をオーバードライブさせたり、高いゲインのプリ管を使ったりする方法です。一般的には、前者は、人工的な歪み傾向となり、後者は、自然な歪み傾向となります。 歪は、プリ管のゲインを可変することでコントロールすることができます。もう、ここまで読み進めてきた方には簡単ですね。プリ管の低ゲイン、中ゲイン、高ゲインのいずれかを意識的に指定することにより、いとも簡単に歪み具合を調整できるのです。 例えば、ブランドAの中ゲインのプリ管を使ってみて、音色は気に入っているのだが、歪みが足りない場合には、同ブランドAの高ゲインのプリ管に交換すれば、お気に入りの音色で気持ちの良い歪みサウンドを作り出すことができます。 このように、プリ管のゲインと歪みとは切っても切れない関係にあり、ゲインとうまくつき合うことで、理想サウンドを手に入れることができるのです。
プリ管のゲイン実測 おまけ編ギターリストに人気が高いリブランド4社のプリ管のゲインについて実測したデータもお見せいたします。いずれも、ヴィンテージサウンドで仕入れ販売している現役のプリ管で、在庫品の中から無作為に6本づつ選択し、測定したものです。各ブランドのプリ管のゲインは、大小の差があれど、バラツキが見られます。 TAD 12AX7A-C RUBY 12AX7AC5 Groove Tube 12AX7C Fender 12AX7/7025
TAD 12AX7A-C
RUBY 12AX7AC5
Groove Tube 12AX7C
Fender 12AX7/7025 これらのゲイン実測値をご覧になってどのようにお感じになりましたか? これらの事実も、まぎれもなく、真空管業界の常識です。 しかしながら、このようなゲインのバラツキは、真空管の構造上やむを得ず、回避することができません。断っておきますが、ゲインのバラツキ自体は、不良品ではありません。電気的には、所定以上のゲインがあるため、今回ご紹介したプリ管は全て合格品です。 これらのバラツキがある真空管は、電子工学科の学生が行う増幅回路の実験に「電子部品」として使う分には全く問題がありません。(注:いまどきの学生実験で真空管を使うとは思えませんが。) しかしながら、左右スピーカーのバランスが重要視されるオーディオアンプや、楽器の一部として重要なギターアンプに、バラツキがある真空管を使うのは、サウンド向上という観点からお奨めいたしません。 「とりあえず音が出れば良い」、というのであれば話は別ですが、できるだけ良い音楽を聴きたい場合や、ましてや音楽ビジネスに使うのであれば、ゲイン特性が揃ったプリ管を使うことをお奨めいたします。 最後に、本テーマがプリ管への興味のきっかけとなれば幸いです。
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