概要
真空管の電気的特性は、サウンドに多大な影響を与えますが、特性のバラツキや劣化状態は、外見からは判断ができません。
真空管アンプにとって、真空管に求められる要素は、真空管特性の「バランス」と後述する「適正値}です。
「バランス」は、真空管の種類によって要求されるものが異なります。
◆パワー管の場合
2本または4本という具合に複数本を使用しますが、各真空管間の特性のバラツキができるだけ少ないことが「バランスが良い」ということになります。ステレオの場合、左右のスピーカーからのサウンドがバランスし、最高のパフォーマンスが発揮されます。
これに対して、バラツキが大きいと、つまり「バランスが悪い」とどうなるのでしょうか。ステレオの場合、左右スピーカーのサウンドがアンバランスとなり違和感を生じるようになります。さらに、バラツキが大きいと、真空管に負担がかかり、管内の電極が真っ赤になることもあります。
また、そもそも、真空管アンプの設計段階では、真空管特性がバランスしていることを大前提として、回路設計されるため、その真空管アンプが持つ性能を最高にまで発揮させるためには、真空管特性がバランスしていることが必須要件なのです。
◆プリ管の場合
一般的にプリ管は、2本の真空管を1本にまとめた構造の双極管であるため、1本の真空管であるにもかかわらず、2つの特性値(ゲイン:増幅率)が得られます。
ここで、問題となるのは、2つの特性値(ゲイン)間のバランスです。上述したように、アンプ設計では、これら特性値がバランスしていることを前提としているため、バランスが崩れると、真空管アンプの性能が十分に発揮されず、サウンドに悪影響を与えることになります。
さらに、プリ管を複数本つかっている場合には、各プリ管間の特性値(ゲイン)のバランスが問題となってきます。例えば、2本のプリ管を左右スピーカーに対応させている場合に2本間にバラツキがあると、ゲインが異なるため、左右アンバランスなスピーカー出力となります。
◆整流管の場合
整流管は、交流を直流に変換する際に、全波整流を行うための真空管で、交流のプラス成分を切り出す第1の電極と、交流のマイナス成分を切り出す第2の電極という2つの電極を有しております。
交流のプラス成分とマイナス成分は、様々なプロセスを経て合成され直流電圧としてパワー管やプリ管の各部へ供給され、サウンドの向上のためにはできるだけ交流成分が含まれていないことが要求されます。つまり、綺麗な直流であることが望ましいのです。
ここで、問題となるのは、上記2つの電極間の特性値(エミッション)のバランスです。これらがバランスしている状態では、交流のプラス成分とマイナス成分との切り出し量が等しくなりますので、安定した直流を各真空管へ供給することができます。
これに対して、アンバランスでは、切り出し量に差が出るため、直流に悪影響を与え、ひいては真空管の出力サウンドにも影響を与えてしまうことになります。
真空管測定サービスの料金
- パワー管 660円/本
- 整流管 660円/本
- プリ管 550円/本
- 送信管 845/211等 1100円/本
※いずれも税込み価格
【測定項目】
【パワー管】 プレート電流(または相互コンダクタンス)
【プリ管】 ゲイン、ノイズ
【整流管】 エミッション
◆お預かりした真空管をご返送するための全国一律送料1100円と代引手数料590円を別途加算の上、代引にてご返送させていただきます。
◆なお、真空管を弊社へ送付する際の送料は、お客様のご負担となります。
真空管測定サービスは、次の真空管についてのみ受け付けております。
ご利用の際には、必ずご確認ください。
【パワー管】
2A3、300B、5881、6550、KT88、6BM8、KT66、6L6系(6L6WGC、6L6WGC、
6L6G、6L6GB、6L6WXT等)、6CA7、EL34、6V6系(6V6GT、6V6GT等)、7027、
7591、EL84/6BQ5、KT90、KT77
【プリ管】
12AT7/ECC81/ECC801、12AU7/ECC82/ECC802、12AX7/ECC83/ECC803
5751、12AY7/6072、12BH7/ECC99、6AQ8/ECC85、6CG7/6FQ7、6922
E88CC、6DJ8、6SN7GT、6SL7GT
【整流管】
5U4系(5U4GB、5U4G等)、5AR4/GZ34、EZ81/6CA4、5Y3系(5Y3GT、5Y3G等)
なお、上記真空管以外につきましては、測定をお受けできませんので予めご了承ください。
真空管測定サービスの免責事項
真空管の健康診断をご依頼の真空管につきましては、お客様から弊社宛の輸送中、 および弊社からお客様への輸送中に生じた真空管の破損、動作不良等につきましては、 理由の如何に関わらず一切補償できかねますので予めご了承ください。
真空管の測定サービスの申し込み
メールにてお申し込みください。
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真空管の交換時の注意点
脅かす訳ではありませんが、真空管交換には、感電の危険性ととなり合わせであることを肝に銘じてください。 アンプの各部には、数百ボルトの電圧が印加されており、電圧露出部分に直接さわると感電します。「ビリッときた」程度の笑い話ではすまなく、時には、死に至るケースもありますので、十分に注意してください。
- アンプの電源スイッチをオフにし、さらに電源プラグをコンセントから抜いた状態で交換作業をすること(感電防止)。電源プラグをコンセントから抜いた状態であっても、アンプ内のコンデンサに電荷がチャージされているため、各部に高電圧が印加されており、依然として、感電の危険性があります。
- 交換作業中は、必ず片手(絶縁ゴム手袋装着)で作業し、両手で作業をしないこと(感電防止)。両手で作業した場合、感電すると、アンプ→右手→右腕→心臓→左腕→左手→アンプという閉回路が形成されることにより心臓に電流が流れ、最悪感電死に至ります。
- 真空管が十分に冷めてから交換すること(火傷防止)。熱膨張の関係より、冷めてからのほうが真空管をソケットから外しやく、作業が楽。
実際の交換手順
- アンプの電源スイッチをオフにする。
- 電源プラグをコンセントから抜く。
- 真空管が熱い場合、十分に冷えるまで待機。
- アンプの裏蓋のネジ等をドライバーで外して、旧真空管(プリ管(親指くらいのサイズ)やパワー管(プリ管よりも大きいサイズが一般的)の実装位置を確認する。ソケットの位置と真空管の規格(12AX7等)を対応づけて、紙に記入しておく。真空管がシールド筒に入っている場合には、シールド筒を外しておく。
- 1本の旧真空管を抜く。真空管は、円周上に配設された複数のピンが、アンプ本体に固定されたソケットに挿入された状態で実装されています。 真空管の根本部分を持時した状態で軸方向(垂直方向)に抜くようにして外します。外しにくい場合には、わずかに揺らしながら少しづつ抜いてください。 ここで、パワー管の場合には、根本部分のハカマとガラス部に分かれていますが、必ずハカマ部分を把持してください。ガラス部分を把持すると、ハカマとガラス部との接着が外れルーズとなります。 また、抜ききったときに、力が余って、真空管の頭をアンプ内部にぶつけて破損させる場合がありますので、力加減に十分配慮してください。 旧真空管を抜く順番はどれでも構いませんが、理想的には、信号の流れに沿って、プリ管、パワー管の順番で抜くのが良いと思います。 また、旧真空管には、実装位置がわかるように、外した順番で連番(1、2、3、4等)を付与し、マジック等で真空管に記入しておくことをお奨めいたします。何らかのトラブルが発生した際に、元の状態に速やかに戻すためです。
- 抜いた1本の真空管の規格(12AX7等)を確認し、この規格と同一規格の新真空管を用意する。つぎに、旧真空管を抜くのとは逆の要領で、当該新真空管を空ソケット((5)で旧真空管が抜かれたソケット)に実装します。なお、真空管とソケットとは、ピン配置が工夫がされているため、円周方向の位置を間違うことなく、実装できるようになっています。ソケットには、完全に挿入してください。挿入状態が甘いと、真空管が脱落しますので注意してください。
- 残りの旧真空管について、(5)と(6)とを繰り返す。ここで、(5)と(6)とを1本づつ作業する理由は、複数規格(12AX7、12AT7等)のプリ管が混在した状態で実装されている場合に、規格を間違わないためです。
- 真空管の交換が終了したら、(4)で紙に記入したものと、新真空管の実装位置・規格とを照合し、間違いが無いことを、指差呼称しながら確認してください。目視確認はヒューマンエラーの原因となるので、声を出しながら何度も確認してください。
- 間違いが無いことを確認したら、電源プラグをコンセントに挿入した後、電源をオンにし、音だしテストを実行してください。
- 問題無ければ、電源をオフにし、電源プラグをコンセントから外した後、裏蓋を元通りにして、交換作業は、無事終了です。
真空管交換の免責事項
真空管交換は、万全の注意の上、お客様の自己責任にて行っていただけますようお願い申し上げます。なお、弊社は、真空管交換作業に伴う事故、火災、傷害の一切の事項に関して責任を負いかねますので予めご了承ください。