【第一弾】現行品12AX7 vs ヴィンテージ管12AX7 蛍光X線分析対決

真空管12AX7の足(ピン)を分析するシリーズの記念すべき第一弾は、つぎの現行品とヴィンテージ管の4種類をご用意しました。

【現行品】12AX7 EH(エレハモ) ノーマル ※販売中!
【現行品】12AX7 EH(エレハモ) ゴールド ※販売中!
【ヴィンテージ管】12AX7 東芝 通測用Hi-S  ※同一ロットで販売中!
【ヴィンテージ管】CV4003(12AX7高信頼管 英国軍仕様) Mullard(ムラード)

12AX7本体を並べて、ピンの色の違いを見てください。

左から、
①【現行品】12AX7 EH(エレハモ) ノーマル ピン色がシルバー。
②【現行品】12AX7 EH(エレハモ) ゴールド ピン色がゴールド。
③【ヴィンテージ管】12AX7 東芝 通測用Hi-S  ※同一ロットで販売中! ピン色が真鍮のような感じ。
④【ヴィンテージ管】CV4003(12AX7高信頼管 英国軍仕様) Mullard(ムラード) ピン色がチタンマフラーのような渋い七色。

それでは、蛍光X線分析装置で各ピンの成分を分析してみましょう。

一番目は、【現行品】12AX7 EH(エレハモ) ノーマルの分析

ノーマルは、ピンにメッキがかかっていないものを指します。※販売中!

結果は、ニッケル99.42%で、ほぼ純ニッケルでした。

二番目は、【現行品】12AX7 EH(エレハモ) ゴールドの分析

ピンに金メッキがかかっているため、ゴールドカラーでゴージャスです。※発売中!

結果は、金83.52%、ニッケル13.79%でしっかりと金が分析されました。
ここで、金属に詳しい方ですとお気づきだと思いますが、金83.52%と言えば、K18の75%よりも高いため、ピンを集めて、売れば、金高騰の今だと結構な金額になるのでは?

残念ながら、X線分析装置は、資料の表層しか分析できませんので、金メッキが厚い場合には、過剰な値になります。質屋の鑑定の現場では、やすりで金メッキ表面を削ってから分析します。

ここで、12AX7 EH ゴールドが厚い金メッキであることを証明するために、薄い金メッキが施された偽物金インゴットを分析してみます。

12AX7 EH ゴールド vs 偽物金インゴット 金メッキ対決です。

偽物金インゴットの分析結果は、ニッケル95.23%、鉛2.76%で、肝心の金は、なんと、下から二番目でわずか金0.020%です。薄ーい金メッキですね。

同じ金メッキでも、12AX7 EH ゴールドの金83.52%がいかにしっかりと厚いメッキであるかがわかると思います。EHは、金をけちることなく、厚メッキで製造していることがわかります。

三番目は、【ヴィンテージ管】12AX7 東芝 通測用Hi-Sの分析

三番目は、先日同一ロットで大量入荷した12AX7 東芝 通測用Hi-Sです。

結果は、ニッケル79.5%、鉛13.17%、鉄3.604%、銅1.717%でした。ニッケル以外の微量金属の配合に高音質の秘密がありそうで、興味深い結果となりました。

鉛などの有害物質の使用を制限するRoHS指令が無い時代の真空管ですから、今では使えない特定有害物質も真空管に使えたことにより、結果的に音質が良いものが作れたのでしょう。

逆に言うと、現在では、鉛フリーというRoHS指令を遵守しなければならいため、ヴィンテージ管と同じ金属成分の真空管を製品として作れないということになります。技術的に作れても、製品として世に出ることが無いのです。

ただし、実験室レベルでは、作れると思います。

こうしてみると、ヴィンテージ管がいかに希少であるかが、X線分析結果より判明したことになります。

ハンダも同様で、昔は鉛ですから、音が良い理由はこの辺にありそうですね。

機会があったら、ヴィンテージハンダも検証してみたいですね。

真空管もハンダも本当に奥が深い。

四番目は、【ヴィンテージ管】CV4003(12AX7高信頼管 英国軍仕様) Mullard(ムラード)の分析

四番目は、英国が誇るヴィンテージ管Mullardの中でも軍用のCV4003(12AX7互換)です。箱も真空管も雰囲気があります。

結果は、ニッケル89.06%、鉛10.56%、銅0.368%で、同じヴィンテージ管でも東芝とは異なる組成です。この辺がヴィンテージ管であっても、音質キャラクタが異なる原因でしょうか。

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投稿者プロフィール

佐々木 英明
佐々木 英明代表取締役 真空管を業として27年
東京都青梅市在住

株式会社クリエイティブファクトリー 創業者&代表取締役

【保有資格】
第1級陸上無線技術士
電気主任技術者
電気通信主任技術者

「真空管と質屋をこよなく愛する青梅人」で、質屋初代で質蔵を2つも建てたことがあり、電気系に強く自分で特許出願ができるという特技を持つ。

1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内大手特許事務所にて特許出願を担当
1998年 「ヴィンテージサウンド」にて真空管の輸入販売で創業
2000年 法人成りにより合資会社ささきに組織変更 資本金110万円
2012年 資本金1000万円に増資
2013年 株式会社クリエイティブファクトリーに組織変更
2014年 総合買取 にじや実店舗オープン
2022年 青梅街道 野上交差点そばに「にじや質店」をオープン

【好きな仕事】
真空管の輸入販売、音響コンサルティング、ブランド品・貴金属・時計等の真贋鑑定、質屋、古物商

【運営サイト】
質屋の「にじや質店」 https://nijiya-7ten.jp

真空管専門店の「ヴィンテージサウンド」 https://vintagesound.jp.jp