パワー管のマッチって何? パワー管編

前回は、真空管のマッチの一般論についてご説明いたしましたが、今回は、真空管の中でもパワー管と呼ばれる種類のマッチについて解説します。

 パワー管は、ギアーアンプやオーディオアンプの花形で、一番目立ち、一番大きい真空管という説明のほうがわかりやすいと思います。

 ギターアンプのパワー管としては、EL34、6L6GC、EL84、6V6GTが有名です。

 一方、オーディオアンプのパワー管としては、上記パワー管の他に、直熱管300B、2A3、45、50等が有名です。

 ここで、マッチとは、真空管の電気的特性を揃えることでしたが、パワー管の場合、電気的特性としては、プレート電流や相互コンダクタンスを使います。簡単に言えば、電流の流れやすさです。

 話を簡単にするために、以下では、パワー管の電気的特性をプレート電流として説明します。 

 ここで、海外仕入れ先からパワー管6L6GC TUNG-SOLが入荷したとします。

箱からパワー管本体を取り出します。

ここで登場するのが、プレート電流を測定するための真空管試験機です。

4本のパワー管をソケットに実装します。

 次に、左から1本目のプレート電流を測定すべく、所定の電圧をかけます。

デジタル表示器には、1本目のプレート電流の測定値として27.9mAと表示されています。

 続いて、2本目を測定してみましょう。

デジタル表示器には、2本目のプレート電流の測定値として25.7mAと表示されています。1本目とは測定結果が異なっているのがわかりますか?

つぎに3本目を測定してみましょう。

デジタル表示器には、3本目のプレート電流の測定値として33.9mAと表示されていおり、1本目および2本目よりもかなり高いのがわかりますね。

 最後に、4本目のプレート電流を測定してみましょう。

4本目のプレート電流は、27.3mAでした。

 以下同様にして、5本目以降のプレート電流を順番に測定してゆき、全パワー管の測定が終了すると、プレート電流が所定の誤差以内になるものを2本、4本、6本、8本等の単位でグループ分けします。グループには、プレート電流の測定ラベルを張ります。

 その結果、2本グループは2本マッチ(ペアとも呼ばれます)、4本グループは、4本マッチ(クワッドとも呼ばれます)、6本グループは6本マッチ、8本グループは8本マッチとして選別され、販売されるのです。

2本マッチ(ペア)

4本マッチ(クワッド)

8本マッチ

8本マッチ

このようにして、パワー管はマッチングされお客様の元へとお届けされます。

Follow me!

投稿者プロフィール

佐々木 英明
佐々木 英明代表取締役 真空管を業として27年
東京都青梅市在住

株式会社クリエイティブファクトリー 創業者&代表取締役

【保有資格】
第1級陸上無線技術士
電気主任技術者
電気通信主任技術者

「真空管と質屋をこよなく愛する青梅人」で、質屋初代で質蔵を2つも建てたことがあり、電気系に強く自分で特許出願ができるという特技を持つ。

1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内大手特許事務所にて特許出願を担当
1998年 「ヴィンテージサウンド」にて真空管の輸入販売で創業
2000年 法人成りにより合資会社ささきに組織変更 資本金110万円
2012年 資本金1000万円に増資
2013年 株式会社クリエイティブファクトリーに組織変更
2014年 総合買取 にじや実店舗オープン
2022年 青梅街道 野上交差点そばに「にじや質店」をオープン

【好きな仕事】
真空管の輸入販売、音響コンサルティング、ブランド品・貴金属・時計等の真贋鑑定、質屋、古物商

【運営サイト】
質屋の「にじや質店」 https://nijiya-7ten.jp

真空管専門店の「ヴィンテージサウンド」 https://vintagesound.jp.jp

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA