パワー管の6L6Gと6L6GCって何が違うの?兄弟or似て非なるものか

6L6GCは、ギタリストの皆さんに馴染みが深いパワー管でフェンダー系やメサブギー系のアンプに良く使われておりますが、6L6Gというパワー管があるのご存じでしたか?

 「6L6GCと6L6Gって、最後にCが付くか付かないかの差で同じじゃねーの」

 という声が聞こえてきそうですが、知ってそうで知らない真空管ネタの一つです。

まずは、外箱の大きさを比べてみましょう。

サイズがこんなにも違いますね。
 左の大きいのが6L6Gで、右の小さいのが6L6GCで、いずれも復刻版のTUNG-SOL(ロシア製)です。

 ちなみに、右の6L6GCは、箱ラベルにSTRと印刷されておりますが、真空管の型番を語る上では、STRは無視して結構です。このSTRは、真空管メーカーが独自に付与した記号みたいなものです。

 つぎに、箱から真空管本体を取り出してみましょう。

大きさも形も全然違いますね。
 どうですか?

 違いは歴然ですね。

 左のクビレがある形の6L6Gに対して、右の6L6GCは、短小寸胴で、真空管の美しさなら6L6Gに軍配が上がります。

 真空管の形の分類からすると、6L6GCは、だるまさんのようにクビレがあるST管と呼ばれ、寸胴の6L6GCはGT管と呼ばれております。

 また、真空管の歴史からみれば、ST管のほうが古く、その改良版(ダウンサイジング)の一つがGT管で新しいです。

 ざっくりとした知識では、大きい真空管ほど古い規格で、小さい真空管ほど新しい規格と覚えておいてください。

 いずれ、その辺の歴史についても解説したいと思います。

 話を戻して、両パワー管を立ててみると、その背の高さはこんなにも違います。

大人と子供くらいに高さが違います。
 袴(ハカマ)から見るとこんなにも太さが違います。ちなみに、袴は、真空管下部の黒い部分でベースとも呼ばれております。

ハカマの直径がこんなにも違いますが、真ん中の出っ張り(ガイドピンといいます)やピン配置は同じなのがミソ。ピン配置が同じなため、
反対の頭側から見ると

ガラス部分の直径もこんなにも違います。左の6L6G側に映っているのは僕の手です。ちなみに、左の6L6GC側に手が映っていないのはなぜでしょうか。ヒントは「ゲッター」です。これがわかる方は相当の真空管マニアです。この「ゲッター」についても深い話があるので、いずれまたの機会に。
 ここまで見たら、フェンダー系やメサブギー系のギターアンプをお持ちの方は、6L6Gを試したくなってきたと思います。

 ちなみに、6L6Gは、その体格さながらに、6L6GCに比べ太いサウンド傾向です。

 が、しかし、6L6Gは、つぎの3つの理由からギターアンプには、不向きなパワー管なのです。

 残念。残念。

(理由1)

管高があるため、ギターアンプのシャーシに入れようとしても、頭がつっかえて物理的に実装できない。

(理由2)

袴の直径が大きいため、真空管ソケットに付属している脱落防止の金具が入らない。

(理由3)実は、これが一番大問題。

 ギターアンプで使われる電圧が高すぎて、6L6Gでは耐えられない。6L6GCに比べ、6L6Gは、耐圧が低い設計となっているため、6L6Gを使うと壊れる可能性が大きく電気的な安全性の面からもお勧めできません。

 えっ、6L6Gは役立たず?

 そんなことはありません。真空管の歴史を振り返ると、6L6Gのほうが先に開発され、当時のオーディオアンプで使われており、大活躍していたのです。

 その後、もっとアンプの出力を上げたい、真空管サイズを小さくしたいというニーズに応えて改良されたものが6L6GCなのです。

 6L6Gなくして、6L6GCは存在しえなかったのです。

 この6L6GCのおかげで、高出力のギターアンプが多数設計され、現在に至っているのです。

 ちなみに、6L6Gの他に、メタル管6L6も存在しますが、これも奥が深いテーマなので、6L6についてはまたの機会に。

 一方、オーディオ業界においては、6L6Gを使った銘アンプは多数あり、いまだに、人気のパワー管です。

 ちなみに、6L6Gを使ったアンプには、6L6Gと6L6GCの両方を使うことができます。これは、6L6G設計のアンプでは、低い電圧をかけるように設計されているため、耐圧に余裕がある6L6GCを使うことができます。 

 6L6Gと6L6GCの違いを知って、楽しい真空管ライフを送りましょう。

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投稿者プロフィール

佐々木 英明
佐々木 英明代表取締役 真空管を業として27年
東京都青梅市在住

株式会社クリエイティブファクトリー 創業者&代表取締役

【保有資格】
第1級陸上無線技術士
電気主任技術者
電気通信主任技術者

「真空管と質屋をこよなく愛する青梅人」で、質屋初代で質蔵を2つも建てたことがあり、電気系に強く自分で特許出願ができるという特技を持つ。

1991年 株式会社リクルート入社
1994年 都内大手特許事務所にて特許出願を担当
1998年 「ヴィンテージサウンド」にて真空管の輸入販売で創業
2000年 法人成りにより合資会社ささきに組織変更 資本金110万円
2012年 資本金1000万円に増資
2013年 株式会社クリエイティブファクトリーに組織変更
2014年 総合買取 にじや実店舗オープン
2022年 青梅街道 野上交差点そばに「にじや質店」をオープン

【好きな仕事】
真空管の輸入販売、音響コンサルティング、ブランド品・貴金属・時計等の真贋鑑定、質屋、古物商

【運営サイト】
質屋の「にじや質店」 https://nijiya-7ten.jp

真空管専門店の「ヴィンテージサウンド」 https://vintagesound.jp.jp

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