Sound Doctor真空管の測定サービス真空管の電気的特性は、サウンドに多大な影響を与えますが、特性のバラツキや劣化状態は、外見からは判断ができません。 真空管アンプにとって、真空管に求められる要素は、真空管特性の「バランス」と後述する「適正値}です。 「バランス」は、真空管の種類によって要求されるものが異なります。 ◆パワー管の場合 これに対して、バラツキが大きいと、つまり「バランスが悪い」とどうなるのでしょうか。ステレオの場合、左右スピーカーのサウンドがアンバランスとなり違和感を生じるようになります。さらに、バラツキが大きいと、真空管に負担がかかり、管内の電極が真っ赤になることもあります。 また、そもそも、真空管アンプの設計段階では、真空管特性がバランスしていることを大前提として、回路設計されるため、その真空管アンプが持つ性能を最高にまで発揮させるためには、真空管特性がバランスしていることが必須要件なのです。
◆プリ管の場合 ここで、問題となるのは、2つの特性値(ゲイン)間のバランスです。上述したように、アンプ設計では、これら特性値がバランスしていることを前提としているため、バランスが崩れると、真空管アンプの性能が十分に発揮されず、サウンドに悪影響を与えることになります。 さらに、プリ管を複数本つかっている場合には、各プリ管間の特性値(ゲイン)のバランスが問題となってきます。例えば、2本のプリ管を左右スピーカーに対応させている場合に2本間にバラツキがあると、ゲインが異なるため、左右アンバランスなスピーカー出力となります。
◆整流管の場合 交流のプラス成分とマイナス成分は、様々なプロセスを経て合成され直流電圧としてパワー管やプリ管の各部へ供給され、サウンドの向上のためにはできるだけ交流成分が含まれていないことが要求されます。つまり、綺麗な直流であることが望ましいのです。 ここで、問題となるのは、上記2つの電極間の特性値(エミッション)のバランスです。これらがバランスしている状態では、交流のプラス成分とマイナス成分との切り出し量が等しくなりますので、安定した直流を各真空管へ供給することができます。 これに対して、アンバランスでは、切り出し量に差が出るため、直流に悪影響を与え、ひいては真空管の出力サウンドにも影響を与えてしまうことになります。
真空管測定サービスの料金
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真空管の場合 | 水道の蛇口の場合 |
バイアス電圧 | 蛇口の開度 |
プレート電流 | 蛇口からの水量 |
バイアス電圧は、蛇口の開度(開き具合)に相当し、プレート電流は、そのとき、蛇口から出る水の水量に相当します。
ここで、水道の蛇口からコップに水を注ぐ場面を想像してください。
蛇口を思いっきり開くと、勢い良く「ジャー」と水が放出されますが、コップの底面で反射された水が周囲に飛び散り水浸しになるも、コップにうまく水がたまりません。→バイアスが浅すぎる
逆に、蛇口をほんの僅かしか開かないと、「チョロチョロ」としかコップに流入せず、コップ一杯になるまで時間がかかりイライラします。→バイアスが深すぎる
日常では、我々はこのように両極端な水道の使い方はしません。蛇口の塩梅を経験的に知っているので、蛇口からの水が適量となるように、蛇口をひねり、コップに水を注ぎます。→バイアスが適正
もうおわかりですね。
「適量の水が流れるように蛇口の開度を調整すること」が「バイアス調整」なのです。
実は、バイアス調整の原理はこんなに簡単なのです。難しくもなんともありません。
バイアスとバイアス調整の違い
バイアス調整について詳述する前に、「バイアス」および「バイアス調整」というテクニカルタームについて確認しておきましょう。両者は、似ているため、混同されがちですが、意味が全く異なります。
「バイアス」は、真空管に印加するバイアス電圧自体、または、バイアス電圧が印加されている状況を意味します。
「この真空管のバイアスはいくらだったけ」という意味は、正確には、バイアス電圧は何ボルトかということです。
「その真空管には、バイアスがかかっているのか?」という意味は、当該真空管にバイアス電圧が印加されているか否かということです。
一方、「バイアス調整」は、上述したバイアス電圧を調整することを意味します。具体的には、バイアス電圧を何ボルトに設定するかということです。ここで設定されたバイアス電圧に応じて、プレート電流が決定されます。つまり、バイアス電圧は、プレート電流を制御するための電圧なのです。
「バイアスが深い」、「バイアスが浅い」 って何?
「バイアスは電圧なのに、深い浅いはおかしいのでは?」と突っ込まれそうです。電気の世界では、電圧は、「電圧が高い」または「電圧が低い」という具合に、高低で定性的に表現されます。従って、「電圧が深い」とか「電圧が浅い」という表現は使いません。
これに対して、真空管の世界では、「バイアスが深い」、「バイアスが浅い」という表現が使われます。理由を知れば、言い当てて妙な表現です。
理由のキーワードは、マイナスの電圧です。バイアス電圧は、ごく一部の送信管を除いて、マイナスの電圧です。これに対して、プレート電圧は、プラスの電圧です。マイナスの電圧というと、イメージしにくいと思いますが、乾電池のプラス・マイナスの向きを逆にしたようなものと考えてください。
ここで、問題です。
バイアス電圧がマイナス30ボルト(−30V)と、マイナス10ボルト(−10V)とでは、どちらの電圧が高いでしょうか。
答えは、マイナス10ボルトのほうが高いです。
中学校の数学の正負を思い出してください。とは言うものの、マイナスのため、プラスの実世界に生きる我々には、直感的にはわかりにくいのです。従って、マイナスのバイアス電圧を高低で表現すると、ヒューマンエラーが発生しやすく、何かと不便です。
そこで、編み出された直感的な表現が、深浅です。
ここで、海面をゼロとして、上空がプラスで、海中がマイナスと考えると、マイナスのバイアス電圧が低いほど、深海となり、深くなります。一方、マイナスのバイアス電圧が高いほど、海面に近づき、浅くなります。このほうが直感であるため、我々にとって、わかりやすく、真空管用語として定着しています。
バイアス電圧の表現を整理しておきましょう。
バイアス電圧 | 正確な表現 | 真空管的表現 |
−30V | 電圧が低い | バイアスが深い |
−10V | 電圧が高い | バイアスが浅い |
バイアスの二大メジャー方式
米国野球のように、バイアスにも、メジャーやらマイナーがあります。
これまでの真空管工学の歴史においては、「真空管に対してどうやってバイアス電圧をかけるか」、すなわち、「水道の蛇口をどうやって回すか」という方式が大先輩たちによって考案されました。長い歴史の中で、様々なバイアス方式が登場しましたが、淘汰の末、現代まで継承され、使われているメジャー方式は、つぎの二つで、皆さんも一度は耳にしたことがあると思います。
- 自己バイアス方式
- 固定バイアス方式
上記二大メジャー方式のほかに、マイナー方式として共通定電流方式、独立定電流方式などがありますが、デメリットが多く、コンシューマ製品には、使われることはまずありませんので、知らなくても全く問題ありません。むしろ、余計な知識があると混乱しますので、きっぱりとマイナー方式は忘れてください。
二大メジャー方式のみを理解すれば、バイアス調整については完璧です。従って、以下では、自己バイアス方式と固定バイアス方式に絞って説明します。
自己バイアス方式とは
自己バイアス方式と聞くと、「自分でバイアス電圧をかける」様子が想像されます。このようなイメージで正解です。蛇口の話で説明すると、自分の蛇口から出た水のエネルギーの一部を使って、蛇口を開けるという方式が自己バイアス方式です。
概念的には、自己バイアス方式においては、水力発電のように、蛇口から出た水のエネルギーの一部を電力に変換し、この電力で、蛇口に直結されたモータを駆動することにより、蛇口を開けているのです。
ここで、水量が増えると、蛇口を閉める方向に作用し、逆に、水量が減ると、蛇口を開ける方向に作用することにより、水量が一定となるように制御が働きます。
実際の真空管においては、真空管を流れるプレート電流(水)をカソード抵抗に流し、このカソード抵抗に生じる逆起電力を「バイアス電圧」として真空管にかけることにより、プレート電流を調整しているのです。
ここで、プレート電流が流れすぎると、バイアス電圧が深くなり、プレート電流が減る方向に作用し、逆に、プレート電流が減ると、バイアス電圧が浅くなり、プレート電流が増える方向に作用し、プレート電流が変化した場合、一定となるように制御が働きます。
このように、自動的にバイアス電圧を制御していることから、自己バイアス方式をオートバイアス方式と呼ぶ場合があります。
一見すると、自己バイアス方式は、いいことだらけのようですが、欠点もあります。上述したように、真空管からのエネルギーの一部を使ってしまうため、その分だけ出力パワーが減ります。
また、オートバイアス方式という名称から、特性が揃っていない複数の真空管を使っても、特性をそろえてくれるという誤解がありますが、そこまではやってくれません。従って、自己バイアス方式であっても、特性が揃った真空管を使うことがベストサウンドを作るためのセオリーであることに変わりはありません。
自己バイアス方式は、プリ管(12AX7,12AU7等)に採用されています。すなわち、プリ管の場合には、バイアス電圧を自動的に調整してくれるため、外部からバイアス調整をする必要がありません。というか、プリ管回路には、バイアス調整をする部分がありませんので、バイアス調整はできません。
従って、プリ管の交換に際しては、バイアス調整が不要であることから、プリ管を単純に差し替えるだけで、使用することができます。
万が一、「プリ管の交換時にもバイアス調整が必要だ」と販売店等に言われた場合には、誤った情報ですから、その販売店とのおつきあいは避けたほうが無難です。プリ管交換のみという単純作業で、バイアス調整料(1万円前後)を請求する販売店は論外です。
販売店の技術スキルを判断するには、バイアス調整に関する質問するのが一番わかりやすいと思います。バイアス調整の知識は、真空管の基本中の基本ですので、バイアス調整について正確に答えられないような販売店は、アルファベットのABCが言えないようなものです。
また、自己バイアス方式は、主として小型の真空管アンプにおけるパワー管(EL34,EL84,6L6等)にも採用されています。
従って、パワー管の自己バイアス方式を採用している真空管アンプの場合、パワー管の交換時には、バイアス調整は不要となりますので、特性が揃ったパワー管に差し替えするだけで、完了です。なお、この場合、バイアス調整が不要ですが、交換前後で真空管の特性が異なると、サウンドが変化します。これを変化させるか、維持させるかにより、サウンドをデザインをすることができます。
固定バイアス方式とは(part 1)
上述した「自己バイアス方式」が「自分でバイアス電圧をかける方式」であるのに対して、この「固定バイアス方式」は、「他人に自己バイアス電圧をかけてもらう方式」です。
いわば、「自己バイアス方式」は、自力本願型で、「固定バイアス方式」は、他力本願型です。
具体的には、固定バイアス方式では、バイアス電圧専用の別電源(以下、バイアス専用電源と称する)が必要となります。このバイアス専用電源のことを他人と表現していますが、実際には、同じアンプ内に設けられる電源の一種です。
ここで、勘の良い方ですと「一種ということは他にもあるのか?」と思ったはずです。パワー管に固定バイアス方式を採用している真空管アンプには、三種類の電源が必要となります。
- 一つ目は、ヒーター(フィラメント)電源で、真空管のオレンジ色に光る電極(ヒータまたはフィラメント)に電圧を供給するための電源です。ヒーター電源の電圧は、使用する真空管により様々ですが、12AX7,12AU7等は12.6Vで、EL34,KT88,6L6等は6.3Vです。ヒーター電源は、通常、交流電源ですが、直熱管には直流電源が使われる場合があります。
- 二つ目は、プレート電源で、真空管のプレート電極にプレート電圧を供給するための直流電源です。プレート電圧は、例えば、約200〜1000Vという高電圧で、使用真空管や設計思想により、最適な値が設計者により決定されます。
- 三つ目は、上述したバイアス専用電源で、真空管のグリッド電極にバイアス電圧(前述したように、一部の送信管を除き、マイナスの直流電圧)を印加するための直流電源です。
一方、パワー管に対して、自己バイアス方式を採用している真空管アンプでは、ヒータ電源およびプレート電源の二つがあれば良く、バイアス専用電源が不要となるため、電源回路を簡易化することができるというメリットがあります。このようなメリットより、小型の真空管アンプに採用される場合が多いのです。
固定バイアス方式が他力本願型で、別電源のバイアス専用電源からバイアス電圧を真空管へ供給することまでは理解できたと思いますが、腑に落ちないのが「固定」というキーワードです。「固定」というと、調整できないというイメージがあり、バイアス調整と固定バイアスとは矛盾する感じがします。
固定というと、物理的な状態を指すため、電気にはなじまない感じもします。固定なのに、なんでバイアス調整なんだと思ったはずです。かくゆう私も、そうでした。未だに、しっくりこない名称だと個人的には思っています。
固定バイアス方式の場合には、真空管の動作に関係なく、一定のバイアス電圧(例えば、−48V)が真空管に(固定的に?)印加されています。
つまり、真空管が熱暴走して大電流が流れようと、真空管が突然死して、オレンジ光が消えようと、またまた大地震が発生しようと、一切おかまい無しの涼しい顔で、一定のバイアス電圧を印加しつづけます。そんな、揺るがない石のような硬い意思を感じさせるバイアス専用電源の態度を「固定」と比喩しているのでしょう。きっと。
これに対して、自己バイアス方式の場合には、真空管のご機嫌を常に伺っており、熱暴走しそうになれば、バイアス電圧を低く(バイアスを深く)してプレート電流を小さくし、やる気がなくなれば、バイアス電圧を高く(バイアスを浅く)してプレート電流を大きくし、という具合に、固定バイアス方式とは対照的です。まるで、子供をあやしている親のようです。
固定バイアス方式とは(part 2) メサブギー編
固定バイアス方式におけるバイアス専用電源には、二種類あります。
バイアス専用電源種別 | 適用例 |
電圧可変型 | 固定バイアス方式を採用しているほとんどの真空管アンプ |
電圧固定型 | 有名なものとしては、メサブギーのギターアンプ |
電圧可変型は、真空管に印加されるバイアス電圧を可変することができるタイプであって、固定バイアス方式を採用しているほとんどの真空管アンプ(オーディオアンプ、ギターアンプ)に用いられているバイアス専用電源のタイプです。
具体的には、可変抵抗器(ポット、トリマ抵抗、ボリューム)を回すことで、バイアス電圧を自在に調整することができます。
何を隠そう、マイナスドライバー等で可変抵抗器を回しながら、バイアス電圧を調整する行為そのものが、真空管アンプユーザの悩みの種である「バイアス調整」だったのです。拍子抜けするくらいに簡単な行為です。
一方、電圧固定型は、バイアス電圧が固定(例えば、−51V)のタイプで、可変抵抗器がありません。従って、外部からバイアス電圧を変えることができません。固定バイアス方式における電圧固定型は、前述した自己バイアス方式とも違いますので注意してください。あくまで、電圧固定型は、固定バイアス方式の電源タイプです。
また、電圧固定型は、ギターアンプとして有名なメサブギーで採用されているタイプで、バイアス調整シンドロームに混乱を招く要因となっているタイプです。
すなわち、ヴィンテージサウンド®への問い合わせのうち、メサブギー関連の質問はつぎの2つです。
- 「メサブギーはバイアス調整が必要と聞いたのですが・・・・・。」
- 「メサブギーはバイアス調整ができないと聞いたのですが・・・・・。」
さて、2つのうちどれが正解でしょうか。上述した電圧固定型であることがヒントです。
正解は、2番目です。
メサブギーは、固定バイアス方式における電圧固定型ですから、バイアス電圧が固定で、調整することができません。バイアス調整したくても、できないのです。
メサブギーの販売店でパワー管交換を依頼し、その作業をご覧いただいた方ならおわかりだと思いますが、メサブギーにおいては、単純に、パワー管を新品に交換するだけです。上述した電圧可変型のように、マイナスドライバーで可変抵抗器を回すようなこともしません。
固定バイアス方式とは(Part 3) メサブギー交換編
メサブギーの場合には、固定バイアス方式(電圧固定型)の採用により、パワー管交換時であっても、バイアス調整が不要である旨を説明いたしました。
さて、実際には、どのような仕組みでそれを実現しているのでしょうか。
簡単に言うと、アンプ本体側の設定に合わせてセレクトした真空管を純正管として用意し、これを販売しているのです。アンプ本体側の設定に真空管を合わせるという点では、ヴィンテージサウンド®で実施しているバイアスフリー倶楽部の逆バイアス調整と技術的コンセプトが同じです。
但し、メサブギーと逆バイアス調整とでは、精度に大きな相違があります。メサブギーの場合には、パワー管のセレクトランクは、プレート電流に応じて3段階ほどしかありません。
グリーン、イエロー等の色で分けていますが、グリーンといっても、ある一定の幅(誤差)がありますので、同じグリーンでも、電気的特性(プレート電流)にバラつきが生じます。従って、同じグリーンに交換しても、厳密には、同一特性とはならない場合が確率的に高いのです。
これに対して、逆バイアス調整では、真空管試験器でプレート電流をピンポイントで測定し、この正確なプレート電流にあわせて真空管をセレクトしますので、格段に精度が高いと言うことができます。逆バイアス調整は、バイアス方式を問わないため、メサブギーのオーナー様にもご利用いただくことができます。
メサブギーの3段階に対して、10段階のセレクトをしているのが、グルーヴチューブのレーティングシステムです。10段階のほうが、精度が高いことは確かですが、ピンポイントで測定する逆バイアス調整には遠く及びません。
メサブギーの固定バイアス方式(電圧固定型)には、メリット、デメリットがあります。
【メリット1】 メンテナンス性の向上
バイアス調整を不要としたことで、パワー管交換を伴うメンテナンス性を飛躍的に高めることができる。
メリット2 メンテナンスコストの削減
バイアス調整費用(1万円前後)が発生しないため、メンテナンスコストを削減することができる。
メリット3 メーカー主導のサウンドコントロールが可能
純正管を使い続けることで、メーカーが設計当初に意図したサウンドがほぼ維持されるため、メーカー主導でサウンドをコントロールすることができる。
デメリット1 純正管が高価
メサブギーの真空管は、一般的に高価です。確かに、試験をしてセレクトをしているのですが、私共から見れば、試験項目やセレクト方法にはそんなに大差はありません。むしろ、エージングをきっちりした上で、セレクトすることが肝要です。
デメリット2 純正管の呪縛
メサブギーでは、技術的スキルが無いと、純正管だけを使い続けることになり、他ブランドのパワー管を試すことができません。いわば、純正管の呪縛から抜け出せないシステムです。但し、純正管のサウンドが気に入っているのであれば、もちろん、何ら問題はありません。
言ってみれば、純正管サウンドは、メーカーからの押し付けにもなりかねません。サウンドの好みは、一人一人違うため、様々なブランドのパワー管を試して、好みのサウンドにカスタマイズするのが理想的です。しかしながら、純正管の種類が非常に少ないため、メサブギーオーナーに選択の余地がほとんど無いのが現状です。
ヴィンテージサウンド®のバイアスフリー倶楽部(無料)をご利用いたければ、メサブギーオーナーも、他ブランドのパワー管を容易に試していただくことができ、サウンドデザインの選択肢を増やすことができます。実際に、メサブギーオーナーからのご相談も数多くお受けしておりますので、安心してお電話ください。
バイアス調整の実際
バイアス調整の対象は、電圧可変型の固定バイアス方式を採用しているパワー管(EL34,KT88等)です。前述したように、電圧可変型では、バイアス専用電源からパワー管に供給されるバイアス電圧を可変抵抗器で可変することができます。
バイアス調整の原理は非常に簡単で、上記バイアス電圧を可変しながら、パワー管に流れるプレート電流を所定の値に設定することです。
具体的には、どうやってやっているのでしょうか。以下に説明する方法は、電子計測の最も基本的で必要最低限の構成によるものです。
バイアス調整に最低限必要な使用機材
- 低周波発信器(低周波信号発生用)
- 電圧測定器(バイアス電圧測定用)
- 電流測定器(プレート電流測定用)
- ダミーロード(擬似スピーカー)
- オシロスコープ(入出力波形観測用)
- 歪み率計(出力波形の歪み率測定用)
低周波発信器は、ギター信号、オーディオ信号等のダミーとしての低周波信号を発生するもので、様々なレベルの波形(正弦波、方形波等)を真空管アンプに入力する役目をしています。
電圧測定器は、いわゆる、テスターで、バイアス電圧を測定する役目をしています。電流測定器もテスターで、パワー管を流れるプレート電流を測定する役目をしており、たいていは電圧測定器と兼用です。
ここで、プレート電流を正確に測定するには、テスターを回路中に介挿しなければならないため、非常にやっかいです。これに対して、電圧を測定するには、回路に対して、並列にテスター棒をあてるだけで済むため、非常に簡単です。このことを利用して、プレート電流検出用の抵抗(たいてい、1オーム)が予め実装されていタイプの真空管アンプでは、当該抵抗に生じる電圧をテスターで測定し、この電圧と抵抗値をオームの法則(電圧=電流×抵抗値)に適用し、計算により、プレート電流を算出するという方法があります。
ダミーロードは、スピーカーに代えて、スピーカー端子に接続される抵抗で、バイアス調整時に当該スピーカーの役目をしています。なぜ、ダミーロードを使うかといえば、スピーカーを接続したままでバイアス調整すると、うるさいからです。
オシロスコープは、入力波形および出力波形を目視確認するためのもので、モニターに各波形を表示します。これにより、歪み具合を感覚的に把握することができます。
歪み率計は、入力波形に対する出力波形の歪み率を正確に測定する役目をしています。
実際の手順自体は、非常に簡単です。大まかな流れはつぎの通りです。
- 上述した各機材を真空管アンプの各部に接続した後、プレート電流が最小になるように、ボリュームを回しバイアス電圧を調整する。パワー管を交換したときに、大電流が流れる事故を防止するためです。
- 電源をオフにして、パワー管を新品に交換する。
- 電源をオンにして、定常状態になったら、プレート電流が所定値となるように、ボリュームを回し、バイアス電圧を調整する。
- オシロスコープおよび歪み率系で歪みが所定値以下となっていれば、バイアス調整終了。歪みが所定値より大きい場合には、バイアス電圧を再設定し直す。
免責事項
バイアス調整には、電子工学の基礎知識が必須で、かつ、活線作業による感電の危険性が伴います。なお、本ブログの内容に基づいてバイアス調整を実施される場合には、電子工学の専門書等により知識、技能を向上させた上で、自己責任で行ってください。バイアス調整に伴う、事故、火災等の一切について、ヴィンテージサウンド®は責任を負いかねます。
バイアス方式の判定方法
ここまで読み進めれば、固定バイアスと自己バイアスについては、理解できたと思います。
ここで、誰しも思うのが、「自分の真空管アンプは、固定バイアス方式、自己バイアス方式のうち、どちらなのか」ということです。
丁寧にマニュアルに明記されていれば、問題解決しますが、複数オーナーを経由している中古アンプの場合には、マニュアルすら存在しない場合があります。この場合には、メーカー(または正規輸入代理店)に直接問い合わせましょう。メンテナンスができない販売店ですと、バイアス方式自体を知らないところも多いため、あやふやな回答しか得られないことがほとんどだからです。
なお、メサブギーの場合には、前述したように、電圧固定型の固定バイアス方式で、バイアス調整できないタイプです。
また、古いアンプのため、メーカーがすでに消滅している場合には、どうすれば良いのでしょうか。
キーワードは、回路図です。
インターネットを検索して、回路図を入手できれば、少しの努力で問題は解決できます。回路図を見るには、電気記号を理解する必要があります。電気記号は、JIS規格で定義されており、電子・電気に携わるものの共通言語として機能します。
といっても、全然難しくありません。小学校の社会科の授業で地図記号を習いましたね。皆さん、つぎの質問にいくつ答えられますか。
- 温泉の記号は?
- 桑畑の記号は?
- 果樹園の記号は?
- 竹林の記号は?
電気記号も全く同じです。真空管アンプに使われている各電子・電気部品を記号化しただけです。しかも、真空管アンプで使われている電子・電気部品は、そんなに種類がありませんから、つぎのように、覚える電気記号もわずかで済みます。
- 電源トランス
- 整流管
- チョークコイル
- コンデンサ
- 固定抵抗
- 可変抵抗
- ダイオード
- 入力端子
- プリ管
- パワー管
- 出力トランス
- 出力端子
- 接続線(交差点に黒丸がある場合には、ハンダ等で接続されており、黒丸が無い場合には、接続されていない)
- etc.
たったこれだけです。言い換えれば、真空管アンプは、部品点数が少なく、回路も簡単であるため、自作愛好者も多数存在するのです。電気記号は、真空管アンプの入門書等に明記されていますので、是非、覚えてください。覚えて損はありません。
電気記号をマスターしたところで、つぎは回路図の読み方をマスターしましょう。回路図といっても、基本的な真空管アンプの構成を知っていれば、それほど難しいものではありません。代表的なプリメインアンプの場合には、つぎの構成となります。
- 電源部
- プリ部
- パワー部
電子・電気工学では、回路図は、信号・電気の流れに沿って、左から右へ描くようにという無言のお約束があります。ですから、回路図の左側は、入力系となり、右側は出力系となります。およそ、このような観点で回路図を見てみると、左側には、音楽信号が入力される入力端子や、AC100Vが入力される電源トランス等の入力系電気記号が記述されています。
一方、右側には、出力トランスや、スピーカーが接続される出力端子等の出力系電気記号が記述されています。中央部には、左から、プリ部を構成するプリ管(12AX7等)や、パワー部を構成するパワー管(EL34等)の電気記号が記述されています。
固定バイアス方式か自己バイアス方式を判定する手順はつぎの通りです。
- 回路図において、パワー管を見つける。
- パワー管のグリッド端子を見つける。
- 電源部と上記グリッド端子とが接続されているかを接続線を追いながら確認する。つまり、グリッド端子に電源部からバイアス電圧(マイナス)が供給されているかを確認する。
- 接続されていなければ、「自己バイアス方式」と判定
- 接続されていれば、「固定バイアス方式」と判定
- さらに、「固定バイアス方式」と判定された場合、グリッド端子と電源部とが「可変抵抗」を介して接続されているとき、「電圧可変型の固定バイアス方式」と判定。この可変抵抗を調整することで、バイアス調整を可能としています。
- 一方、可変抵抗が無い場合、一定のバイアス電圧がグリッド端子に供給される「電圧固定型の固定バイアス方式」(メサブギータイプ)と判定。
バイアス方式を判定できたところで、いざ、バイアス調整をしようとするときには、別の問題が発生します。それは、バイアス調整用の可変抵抗の実装位置がどこなのかということです。回路図上には、確かに、可変抵抗があっても、どこにも見当たらないというケースもあります。
実装位置としては、つぎのうちのいずれかです。
- 表面パネル(わかりやすく、楽にバイアス調整ができます)
- 回路基板(込み入っている部品の中から探す必要があり、少々面倒)
表面パネルの場合には、メンテナンス性に優れており、オーナー自身で容易にバイアス調整ができるようにという設計者の配慮がうかがえます。
一方、回路基板の場合には、場所的に見にくいため、少々面倒な作業となりますが、上述したパワー管のグリッド端子に可変抵抗器が接続されていますから、慣れれば、すぐに見つけることができます。
固定バイアス方式(電圧可変型)のタイプ
バイアス方式が固定バイアス方式(電圧可変型)と判明し、バイアス調整用の可変抵抗(ボリューム)の実装位置がわかると、早速、バイアス調整をしてみたくなりますが、ちょっと待ってください。
「バイアス調整用の可変抵抗は何個ありましたか?」
「えっ! 何個もあるの?」という声が聞こえてきそうですが、固定バイアス方式には代表的なものとして、3つのタイプがあります。
- パワー管n本に対して、可変抵抗が1個のタイプ1
- パワー管n本に対して、可変抵抗が(n/2)個のタイプ2
- パワー管n本に対して、可変抵抗がn個のタイプ3
どのタイプにするかは、メンテナンス性、精度およびコストを考慮して、アンプ設計者が決定します。各タイプの特徴は以下の通りです。
タイプ1
パワー管n本に対して、共通のバイアス電圧を供給するため、可変抵抗が1個だけの構成です。可変抵抗が1個のため、バイアス調整が楽になり、メンテナンス性が向上するとともに、コスト削減を図ることができます。但し、精度は、n本のパワー管のマッチング度合いに依存します。従って、n本のパワー管のバラツキが大きいと、精度が悪くなります。このことから、タイプ1に使用するパワー管は、限りなく特性が良く揃ったマッチド管である必要があります。
タイプ2
パワー管n本に対して、(n/2)個の可変抵抗が設けられるタイプで、(n/2)本のパワー管に対して、1個の可変抵抗が設けられています。具体的には、4本のパワー管(KT88等)を使用している真空管アンプの場合、可変抵抗は2個で、2本の真空管に対して、1個の可変抵抗が設けられています。
この場合、ペア(2本)単位で個別にバイアス調整できるため、調整分解能がタイプ1に比して、2倍となりますので、理論上は、精度が2倍高くなります。従って、ペア間で特性が揃っていなくても、バイアス調整により、「見かけ上」特性を揃えることができます。ここでのキーワードは、「見かけ上」です。
ここに、あるバイアス条件においてプレート電流30mAでそろえたパワー管2本(以下、ペア1と称する)と、同バイアス条件においてプレート電流40mAで揃えたパワー管2本(以下、ペア2と称する)があるとします。ペア1とペア2とは、同一バイアス条件でプレート電流差が10mAもかけ離れているため、当然マッチしておらず、後述する動特性が揃っていません。
これらのアンマッチなペア1およびペア2を当該真空管アンプに実装した場合には、当然、バイアス調整をして、同一のプレート電流に揃える必要があります。例えば、50mAに揃える場合には、ペア1に対応する可変抵抗を回して、ペア1のプレート電流を50mAに調整します。同様に、ペア2に対応する可変抵抗を回して、ペア2のプレート電流も50mAに調整します。
これで、めでたく、50mAに揃って、バイアス調整が完了しました。ステレオの場合、ペア1は右スピーカ、ペア2は、左スピーカに対応します。
ここで、問題です。
この状態で音出しすると、左右スピーカーの音響特性も揃っているでしょうか。
答えは、残念ながら音響特性は揃っていません。
ヒントは、前述した「見かけ上」です。
バイアス調整により揃えられたプレーと電流50mAというのは、静特性といって、音楽信号が入力されないとき、すなわち、無信号時におけるパワー管の特性です。
音出し時には、静特性に対して、動特性が重要となります。動特性は、変動する音楽信号を増幅するときの特性を指し、ペア1とペア2とは異なります。
つまり、ペア1およびペア2で静特性を揃えても、それは見かけ上であって、実際に音楽信号を増幅する際の動特性が異なれば、当然音響特性も揃うはずがありません。
静特性と動特性との関係は、エンジン馬力が異なる2種類の自動車を走行させたときの性能差に例えるとわかりやすいです。
パワー管のペア1を、150馬力の日産マーチとします。
一方、パワー管のペア2を、400馬力のポルシェ911カレラとします。
バイアス調整により、ペア1およびペア2のプレート電流を50mAを設定するということは、高速道路で2台並んで、日産マーチおよびポルシェ911カレラを共に時速100kmになるように、アクセル量を設定することです。日産マーチおよびポルシェ911カレラは、並列走行しています。この状態が静特性で、見かけ上、同じです。
しかしながら、時速を変化させてみると、すなわち、加速または減速をさせてみると、両車両の走行特性には、大きな差が生じます。
日産マーチは、同じ分だけアクセルを踏み込んでも、ポルシェ911カレラの加速度に遠く及びませんし、同じ分だけブレーキを踏み込んでも、かのドイツ車の世界一のブレーキ特性に太刀打ちなどできません。このような、車両の振る舞いがパワー管の動特性なのです。
よく、アンマッチな2ペアのパワー管であっても、バイアス調整で合わせられるから大丈夫だという見解がありますが、誤りで、見かけ上の特性を合わせられるだけであって、実際の動特性までは、合わせることはできません。
従って、タイプ2であっても、特性が揃った4本のパワー管を使用することが、上質なサウンドを手に入れる近道です。ペア1およびペア2という安易な妥協が、サウンドに悪影響を与えることをどうぞ肝に銘じてください。
タイプ3
最後は、n本のパワー管に対して、n個の可変抵抗が設けられているタイプです。すなわち、各パワー管に対応して、個別に1個の可変抵抗が設けられており、メンテナンス性およびコストで、他のタイプより劣るという欠点がありますが、この欠点を補うに余る長所が、タイプ3にはあります。それは、高い精度です。
静特性を揃えたn本のパワー管であっても、プレート電流の誤差が必ず存在します。タイプ3では、バイアス調整時に各可変抵抗を回すことにより、これらの微妙な誤差を個別に調整できるため、n本のパワー管のプレート電流をきれいに揃えることができます。タイプ1およびタイプ2に比して、非常に高い精度を実現することができます。
なお、タイプ3であっても、動特性の影響を少なくするため、できるだけ特性が揃ったパワー管の使用が重要であることに変わりはありません。
このように、固定バイアス方式のタイプによって、可変抵抗の数が異なるため、必ず、確認するようにしてください。
バイアス調整とマッチド管の関係
固定バイアス方式(電圧可変型)においては、前述の説明より、マッチド管(ペア、クワッド等)、すなわち、特性が揃ったパワー管が、バイアス調整の大前提であることがおわかりいただけたと思います。つまり、バイアス調整時には、精度が高いマッチド管を用意する必要があります。
そのマッチド管を真空管アンプに実装した後に、バイアス調整を行わなければなりません。従って、固定バイアス方式(電圧可変型)では、マッチド管を用意すれば、バイアス調整不要という噂は、全くの誤りです。
これに対して、固定バイアス方式(電圧固定型)の場合には、バイアス調整ができませんので、マッチド管であって、かつ当該バイアス電圧に対応した特性のマッチド管を用意する必要があります。
なお、自己バイアス方式に限っては、バイアス調整が不要ですので、マッチド管を用意するだけで良いのです。
このように、マッチド管は、バイアス方式に応じて、三種類の意味合いがありますので、しっかりと、覚えておいてください。
バイアス調整と技術スキルの関係
真空管アンプを業としているプロショップにおいては、バイアス調整のやり方を見れば、そのエンジニアの技術スキルがわかってしまうほど、バイアス調整は、真空管回路の基本中の基本であるとともに、サウンドデザインの要でもあります。
まずは、「バイアス調整の実際」でご紹介した最低限の使用機材すら使わず、テスターだけでバイアス調整をするエンジニアは、論外です。悪い意味で使われる政治屋という言葉があるように、この姿勢は、まさにアンプ屋です。
正しいバイアス調整方法を知らないか、知っていても面倒なので簡易的な方法を採っているかのいずれかです。この場合、とりあえず、音が出る状態にすることはできますが、荒い仕事で、ベストサウンドには程遠いポジションです。
つぎは、「最低限の使用機材」を使ってバイアス調整をするが、アンプオーナーからのヒアリングを一切しないエンジニアです。技術的には完璧でも、自己満足なサウンドしか出ませんので、アンプオーナーを満足させることができない点で、これも、論外といわざるを得ません。
実は、音作りにとって、バイアス調整は絶好の機会なのです。つまり、バイアス調整によって、良くも悪くもサウンドも変化させることができますので、アンプオーナーから好みのサウンド傾向をヒアリングしつつ、バイアス調整にフィードバックさせるという姿勢が重要です。
最後に、技術スキルが最も高いエンジニアは、アンプオーナーに十分なヒアリングを実施してサウンドの好みを把握した上で、「最低限の使用機材」を使い倒し、理想的なサウンドに近づけるべく、バイアス調整を極める人だと思います。まさに、アンプ職人という言葉がぴったりです。アンプ職人には、バイアス調整に加えて、真空管に関する深い造詣も必要とされますが、中々いるものではありません。
ところで、ヴィンテージサウンド®でお客様に真空管をお薦めする際には、ヒアリングを十分にします。ヒアリング内容は、多岐に亘り、時には、1時間を越える場合も珍しくありません。
ギターアンプオーナーの場合には、アンプ機種、周辺機材(エフェクタ、ギター等)、音楽ジャンル、現状の真空管構成、現状サウンドの特徴、理想サウンドの傾向、アンプ使用場所(スタジオ、自宅、ライブ会場等)、使用頻度、使用年数等をヒアリングした上で、最もベストと思われる組み合わせの真空管をお薦めしております。
オーディオアンプオーナーの場合には、アンプ種別(メーカー品、自作品)、周辺機材(スピーカー、ソース再生期)、音楽ジャンル、現状の真空管構成、現状サウンドの特徴、理想サウンドの傾向、アンプ使用場所(リスニング専用ルーム、リビング等)、使用頻度、ソース媒体(CD、アナログ)、使用年数等をヒアリングします。
マイクアンプオーナーの場合には、アンプ機種、録音環境(スタジオ、屋外)、録音対象(楽器、ヴォーカル等)、音楽ジャンル、現状の真空管構成、現状のマイクのり、理想サウンドの傾向、使用年数等をヒアリングします。
ここまでヒアリングしなければ、逆に、真空管をお薦めすることができないのです。なぜならば、アンプの使用環境およびサウンドの好みが千差万別であるとともに、真空管のサウンド特性も千差万別だからです。
ここで、真空管のセレクトにも、黄金率(ゴールデンルール)というものがあります。
ヴィンテージサウンド®では、お客様からのヒアリング結果を黄金率(ゴールデンルール)に適用した上で、真空管をセレクトさせていただくことにより、上質なサウンドデザインをご提案させていただいております。
バイアス調整のまとめ
最後に、バイアス調整のポイントについてまとめてみます。
バイアス方式 | 適用管 | バイアス調整 |
自己バイアス方式 (セルフバイアス方式、オートバイアス方式、カソードバイアス方式ともいう) |
プリ管 パワー管 |
不要 |
固定バイアス方式(電圧可変型) | パワー管 | 必要 |
固定バイアス方式(電圧固定型) | パワー管 | 不可 |
ここまでくれば、バイアス調整については、正確な知識を会得されたと思いますので、本コラムで最初にご紹介した質問をもう一度確認します。
-
「ギターアンプの真空管を交換したいが、バイアス調整が必要ですか。」
- →バイアス方式が固定バイアス方式(電圧可変型)であれば、必要です。自己バイアス方式であれば不要です。なお、固定バイアス方式(電圧固定型)である場合には、バイアス調整ができませんので、当該バイアス電圧に対応するようにセレクトされたパワー管を使うか、ヴィンテージサウンド®のバイアスフリー倶楽部に入会(無料)し、逆バイアス調整を利用してください。
-
「特性が揃ったマッチドの真空管を購入すれば、バイアス調整がいらないと言われたのですか。」
- →誤りです。固定バイアス方式(電圧可変型)の場合には、特性が揃ったマッチド管を使っただけでは、バイアス調整をしたことにはなりません。あくまで、マッチド管の用意は、バイアス調整前の準備にすぎません。従って、マッチド管を交換した後に、改めてバイアス調整が必要となります。
-
「バイアス調整をしないとアンプが壊れますか。」
- →壊れる場合もあります。固定バイアス方式(電圧可変型)の場合には、適正にバイアス調整しないと、過電流が流れて各部が焼損する場合もあります。なお、自己バイアス方式の場合には、バイアス調整が不要で、検査済みのパワー管を使用していれば、正常に動作します。また、固定バイアス方式(電圧固定型)の場合には、当該バイアス電圧に適合しないパワー管を使うと、過電流が流れて各部が焼損する場合もあります。
-
「同じ規格・ブランドの真空管に交換すれば、バイアス調整は不要ですか。」
- →固定バイアス方式(電圧可変型)の場合には、誤りで、バイアス調整が必要となります。なお、自己バイアス方式の場合には、バイアス調整は不要です。また、固定バイアス方式(電圧固定型)の場合には、バイアス調整ができないため「同じ規格・ブランド」という条件よりも、「同様の電気的特性」という条件が重要で、この条件に該当するパワー管に交換する必要があります。
-
「バイアス調整は自分でできますか。」
- →ある程度の技術スキルがあれば、バイアス調整自体は難しくないため、できると思います。但し、感電等の危険があるため、あくまで、自己責任にて行ってください。
-
「自分のアンプはバイアス調整不要と言われたのですが。」
- →バイアス方式が自己バイアス方式であれば、不要です。なお、固定バイアス方式(電圧可変型)の場合には、バイアス方式は必要です。また、固定バイアス方式(電圧固定型)の場合には、バイアス調整ができないため、当該バイアス電圧に対応するパワー管を使用してください。
-
「純正管を使えばバイアス調整が不要と楽器店に言われました。」
- →半分正解で、半分不正解です。メサブギーのように、固定バイアス方式(電圧固定型)の場合には、正解です。但し、純正管以外は使用できないかの誤解があるようですが、ヴィンテージサウンド®の逆バイアス調整をご利用いただければ、音色が異なる他ブランドのパワー管にも交換できます。なお、自己バイアス方式および固定バイアス方式(電圧可変型)の場合には、純正管である必要性は全くありませんので、自由にお好みのブランドのパワー管を使用することができます。
真空管交換に必要なバイアス調整のコスト かなりの高額コストがかかります
従来、ほとんど真空管アンプにおいては、真空管を交換する度にバイアス調整が必要であるため、高額な調整料(10,000円前後)と、重量アンプを発送するための高額な送料(5,000円前後)が、バイアス調整の度に発生しておりました。バイアス調整は、真空管アンプの愛好者にとって、技術的に理解しにくく、しかも面倒でありました。
真空管を交換するには、つぎの3つのコストが発生します。
- バイアス調整コスト
- 新品真空管コスト
- アンプ本体の輸送費
コスト試算例
条件:ギターアンプで1年毎にパワー管(例えば、15,000円と仮定)を3回交換した場合。バイアス調整費用:10000円と仮定、楽器店等へのアンプ発送送料5,000円と仮定。
コスト名目 | 従来のバイアス調整 | |
1年目 | バイアス調整 | 10,000円 |
真空管代金 | 15,000円 | |
アンプ送料 | 5.000円 | |
2年目 | バイアス調整 | 10.000円 |
真空管代金 | 15,000円 | |
アンプ送料 | 5,000円 | |
3年目 | バイアス調整 | 10,000円 |
真空管代金 | 15,000円 | |
アンプ送料 | 5,000円 | |
総額 | 90,000円 |
3年間で90,000円ものコストが発生します。
バイアス調整代が0円になるバイアスフリー倶楽部 会員募集 会費無料
従来、ほとんど真空管アンプにおいては、真空管を交換する度にバイアス調整が必要であるため、高額な調整料(10,000円前後)と、重量アンプを発送するための高額な送料(5,000円前後)が、バイアス調整の度に発生しておりました。バイアス調整は、真空管アンプの愛好者にとって、技術的に理解しにくく、しかも面倒でありました。
そこで、ヴィンテージサウンド®では、面倒な「バイアス調整」を不要とするサービスとして「バイアスフリー倶楽部」を提供しております。
「バイアスフリー倶楽部」は、お客様のメリットが非常に多く、しかも、バイアス調整コストをゼロにすることができるという画期的なサービスです。
バイアスフリー倶楽部のお問合わせ 0120−194−380
入会は非常に簡単 これで面倒かつ高コストのバイアス調整から解放されます。
つぎの入会申込書を印刷して、真空管アンプに実装されているパワー管をヴィンテージサウンド®へ送るだけで、会費も無料です。
入会申込書を印刷して申し込む(ファイル形式 PDF)
※アンプ1台につき1登録です。複数台のアンプを所有の場合、それぞれのアンプについて入会申し込みを行ってください。
バイアスフリー倶楽部の特典
- 永久に会費無料
- 入会以後、バイアス調整が一切不要となる。
- バイアス調整コストをゼロにすることができる。
- 重いアンプを発送する必要が無い。
- アンプ発送コストをゼロにすることができる。
- 同一規格(ex.EL34)の真空管であれば、他ブランドの同規格品に自由にバイアス調整不要で交換できるため、真空管サウンドの自由度が高まる。
- ヴィンテージサウンドで®パワー管の交換履歴を管理してもらえる。
- ヴィンテージサウンド 代表による真空管コンサルティングを優先的に無料で受けられる。
バイアスフリー倶楽部入会から真空管交換までの流れ
- 上記入会申込書に必要事項を記入の上、当該パワー管をヴィンテージサウンド®へ発送(送料はお客様ご負担)
- パワー管を測定後、当該パワー管および会員カードを発送。
- 次回、パワー管購入時に会員番号をお知らせいただければ、2で測定した結果に基づいて、特性が近い新品パワー管をセレクト(逆バイアス調整)し発送。
- 新品パワー管を交換(バイアス調整不要)
※バイアスフリー倶楽部入会と真空管購入を同時に行うこともできます。詳細は、入会申込書をご覧下さい。
コスト比較
本バイアスフリー倶楽部と、従来のバイアス調整とのコスト比較をご覧ください。
条件:ギターアンプで1年毎にパワー管(例えば、15,000円と仮定)を3回交換した場合。バイアス調整費用:10000円と仮定、楽器店等へのアンプ発送送料5,000円と仮定。
コスト名目 | バイアスフリー倶楽部 | 従来のバイアス調整 | |
1年目 | バイアス調整 | 0円 | 10,000円 |
真空管代金 | 15,000円 | 15,000円 | |
アンプ送料 | 0円 | 5.000円 | |
2年目 | バイアス調整 | 0円 | 10.000円 |
真空管代金 | 15,000円 | 15,000円 | |
アンプ送料 | 0円 | 5,000円 | |
3年目 | バイアス調整 | 0円 | 10,000円 |
真空管代金 | 15,000円 | 15,000円 | |
アンプ送料 | 0円 | 5,000円 | |
総額 | 45,000円 | 90,000円 | |
差額 | 3年間で45,000円ものコスト削減ができ、交換コストを半分にすることができます。 |
このように真空管交換に伴うコスト削減の効果が大きく、削減コストを真空管のグレードアップ等に使うことにより、費用対効果を飛躍的に向上させることができます。
真空管メンテナンスのポイント
真空管アンプを快適に使用するためには、定期的な真空管交換が必要となります。言い換えれば、的確なメンテナスをすることにより永きに亘って真空管サウンドを維持することができます。
真空管の寿命は、使用時間にもよりますが、オーディオアンプで4年、ギターアンプで1年と言われております。
真空管の内面に蒸着されている銀色の被膜(ゲッター)が真っ白になっていたり、ヒータが点灯しない場合には、明らかにその真空管が寿命を全うしたとわかりますので、問題ありませんが、サウンドの変化より、真空管の寿命を判断するポイントはつぎの通りです。
- サウンドにノイズが乗るようになってきた
- ギターアンプで歪みにくくなってきた
- 音の輪郭がぼやけてきた
- 音像が小さくなってきた
このような現象が発生したらほとんどが真空管が原因で、交換すれば解消されます。
真空管の寿命を判断する方法
まず、真空管の不良が頻発する時期は、初期と末期の2つがあります。初期不良は、新品で使いはじめてからおよそ4ヶ月以内に発生します。ヴィンテージサウンドの保証期間を120日ととしているのは、この初期不良を救済するためです。初期不良期間を問題無くクリアできれば、安定期に入り、安心してご使用いただくことができます。
一方、末期は、長年の使用で真空管が当初の性能を維持できなくなり、寿命をまっとうする時期です。末期まで使い倒すことができれば、真空管にとってこれほど幸せなことはありません。
ここで、真空管不良が発生した場合には、「ボリュームを上げても音量が大きくならない」、「前回よりも音が小さくなった」、「スピーカーからの音楽に含まれるノイズが大きくなった」等の異常現象が発生します。なお、真空管側ではなく、真空管以外の電子部品の不良である可能性もあります。
このような異常現象が発生した場合には、つぎの手順で「原因箇所の切り分け」を行ってください。 なお、原因の切り分けは、感電や火災に注意して、自己責任で行ってください。切り分けに伴うトラブル(事故、故障、火災等)につきましては、弊社は一切の責任を負わないものといたします。
(ケース1)
左右スピーカーのうち片方のスピーカー出力に異常現象(ノイズ、レベルダウン等)がある場合
- 右側担当のプリ管と、左側担当のプリ管とを入れ替える。 →異常現象が一方から他方へ移れば、当該プリ管と判定。
- (1)で異常現象が移らなければ、右側担当のパワー管と左側担当のパワー管とを入れ替える。 →異常現象が一方から他方へ移れば、当該パワー管と判定。
- (2)でも異常現象が移らなければ、真空管以外が原因である可能性が高い。
(ケース2)左右両方のスピーカー出力に異常現象(ノイズ、レベルダウン等)がある場合
- 実装されている整流管と、正常動作する別の整流管とを入れ替える。 →異常現象が消滅すれば、当該整流管の不良と判定。
- (1)で現象が消滅しなければ、全プリ管と、正常動作する別のプリ管とを入れ替える。 →異常現象が消滅すれば、当該プリ管の不良と判定。
- (2)で異常現象が消滅しなければ、全パワー管と、正常動作する別のパワー管とを入れ替える。 →異常現象が消滅すれば、当該パワー管の不良と判定。
- (4)(3)でも異常現象が移らなければ、真空管以外が原因である可能性が高い。
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